社会が変化するなかでは「現状維持」こそ最大のリスク
あらためて思うのは、創業100年やそれ以上に及ぶ長寿企業には長寿企業になるための要素というか素質があるのだと思う。
その一つが、変化に敏感であることだ。ダーウィンの進化論は、変化に適応できる生きものだけが生き残るという考えのうえに成り立っている。企業も似ているのではないか。
時代が変わり、社会が変わる。商売のやり方が変わり、市場のニーズも変わる。当たり前のことだ。当たり前のことだから、会社の業容も、当たり前のように変えていかなければ生き残れない。
それが具体的にどんなことなのかと考えると、例えば、鍋から工業用品に事業の軸を移すことだったり、工業化を見据えてベアリング業界に参入したりすることなのだろうと思う。会社の経営資源は限られているため、鍋も手掛けつつ工業用品もやるというわけにはいかない。そこで取捨選択をするときに、過去に目を向ける会社は「このままで」「とりあえず様子見で」となる。過去の成功体験や既存の働き方を維持しようと考え、いつの間にか維持が固執に変わる。
一方、周りの変化に目を向ける会社は、過去ではなく明日を考える。明日、何が求められるかを予想し、そのために不要なものは切り捨て、必要なものを取り入れる。そう考えれば、鍋清は生き残るべくして生き残ったのかもしれない。
大胆な事業領域の変更も、製造業から商社業への転身も、ベアリングという未知の領域への進出も、表面的にはリスクが大きい判断のように見えるが、そうではない。戦前から戦後にかけて、社会が一変するような大きな変化が起きているときは、変化のなかで変わらずにいようとすることが最大のリスクなのだ。
成長し続けるには「会社全体の粘り強さ」が重要
もう一つ付け加えるなら、会社として変化するための取り組みを粘り強く続けることが大事だ。
長寿企業は経営者が変わりながら存続していく。そのため、たった一人の傑出したリーダーがいるだけでは、短期的には成長できるかもしれないが、長寿企業にはなれない。
優れたリーダーがいなくなることにより、成長が止まるからだ。そのリスクを回避するためには、リーダーのみならず、社員全員、会社全体が強くならないといけない。
どうすれば強くなれるのだろう。その要因について、当時、取締役営業部長だった叔父の清作は、危機感というキーワードを挙げている。
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