ラグジュアリーかつ低環境負荷のサファリを志向
2012年1月、スリランカ南東部に位置するヤーラ国立公園。太陽が沈み、焚き火が照らす中、ラディーシュ・セラマトュ氏は、信頼できる4人のパートナー候補に最終的な事業説明を行った。以前にも、まだ具体的に固まっていない段階で一度話をしていたが、今回は契約に際して必要となる、財政面の情報を提供したのである。そしてその夜、5人は合意をした。セラマトゥ氏らが合意した計画とは、スリランカのジャングルの中で、古きよき時代の雰囲気と高級なワインや食事を提供するという、ラグジュアリーなサービスである。
このようにしてセラマトゥ氏が立ち上げたレオパード・トレイル社は、ヤーラ国立公園とウィルパススー国立公園で高級テントを用いたサファリを提供している。アフリカ大陸でのラグジュアリーなサファリに影響を受け、それをスリランカに最適化して持ち込んだものである。スリランカのサファリ産業を強化するという明確なビジョンを持ちつつ、倫理性にも考慮したビジネスを展開する情熱に突き動かされている。つまりハイエンド(高級志向)かつローインパクト(低環境負荷)な観光モデルにこそ、スリランカの活路があると考えている。
課題は観光産業と自然保護の両立
レオパード・トレイル社の5人の代表者は、長年の知り合いではあるが、それぞれが異なるグループや環境にいた。そして彼らは野生動物、特にサファリへの愛情によって深く結び付いている。サファリとの出会いは、もともとは家族旅行で共にヤーラ国立公園に来たときから始まった。その後、スリランカの他の地域や南アジア・アフリカなどを巡るにつれ、多くの人脈が築かれていった。そしてサファリへの情熱が深まるとともに、まだ未発達なスリランカのサファリ産業が秘める可能性について思いを巡らせていった。
「海外を知るたびに、もし同じ経験がスリランカでできたらどうだろうか、と常に考えていました。そして、サファリにおける地域ごとの違いを比較していました」とセラマトュ氏は言う。
スリランカの観光開発局は、昨年スリランカを訪れた観光客数が飛躍し、外貨収入も急上昇したと胸を張っている。しかし実際は、海外旅行は世界的なトレンドであり、南アジアの大部分が観光客数と消費の急成長を報告しているのである。
またスリランカには特有の問題がある。南アジアの国々の森林面積が増加している中で、スリランカの森林面積はゆっくりとだが着実に減少していると、世界銀行の調査で明らかになった。これは野生動物に観光業を依存しているスリランカ経済にとって見過ごせない重要な問題であり、先進するアフリカから学ぶべきポイントでもある。
次回はスリランカが見習うべきだという、アフリカにおけるサファリ産業の取り組みについてお伝えします。