住宅ローンを払っている人は特に注意が必要!
事業と関係する費用をピックアップしたら、つぎは事業割合をそれぞれ考えていきます。「プライベート用」と「事業用」の割合を考えるということです。
事業割合の算定方法は、法律で具体的に定められているわけではありません。そのため、各自が自分なりに説明できる方法で算出すれば問題ありませんが、きちんと理屈のとおる説明を用意しておかなくてはなりません。
たとえば家賃や固定資産税であれば、自宅の図面をオフィス部分と居住部分に分け、その床面積の割合で計算するという方法が考えられます。電話料金であれば、仕事で使った時間を、1分あたりの通話料と掛け合わせるといった方法になるでしょう。
自宅兼事務所にするデメリットについても触れておきたいと思います。じつは、場合によっては、自宅兼事務所にすることにより、むしろ税金が増えてしまうケースもあるのです。
税金の制度には、「居住用の不動産」を対象にした優遇制度が複数あります。代表的なものは、いわゆる「住宅ローン控除」です。年末時点の住宅ローン残高に応じた金額を所得税から差し引くことのできる制度で、節税メリットはとても大きいものです。
住宅ローン控除の対象となる物件は、やはり自宅だけです。そのため、仮に本来の住宅ローン控除の金額が10万円であったとしても、自宅の30%を事務所にした場合には、住宅ローン控除は10万円×70%=7万円となってしまいます。
とくに避けたいのは、住宅ローン控除を受けている状態で、自宅の半分以上を事務所にしてしまうことです。住宅ローン控除には、「床面積の2分の1以上が専ら自己の居住の用に供される家屋である」という条件があるため、この条件にひっかかると、住宅ローン控除がゼロになってしまうのです。
では、住宅ローン控除を活用しながら、自宅件事務所の節税メリットも両立させる方法はないのでしょうか? じつは、居住用の床面積が、その家屋の総床面積のおおむね90%以上に相当する場合は、家屋の100%が居住用であるものとして住宅ローン控除を算定できるというルールがあります。
つまり、もし事業割合が10%程度に収まれば、固定資産税などの10%を必要経費にしながらも住宅ローン控除は100%使えるということですから、メリットを両取りできるというわけです。
ただし、必要経費の状況によっては、事業割合が10%を超えて住宅ローン控除が減ったとしても、それ以上に必要経費による節税効果が大きいという場合もありえます。
この選択は、将来の節税に大きな影響を与えますので、自宅を自宅兼事務所にするときは、さまざまなパターンをシミュレーションしてみてください。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年2月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
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