診療後、認知症の父を車に乗せ…毎晩出かけた「夕食」の思い出

長年経過観察を続けてきた、筆者の母親の頚髄腫瘍に悪化の兆しが見え、手術をするため3ヵ月の入院生活となりました。その間、クリニックの勤務の傍ら、自宅にひとり残る認知症の父を介護しなければなりません。しかしそこには、これまでになく濃密な父と子の時間がありました。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

母が入院中の3ヵ月は、父と最も親密に付き合った3ヵ月

父の認知症のほうは投薬での治療を続けていました。薬を処方してもらうために大学病院に通院していましたが、その通院には、母が付き添っていたのです。母が手術のために付き添っていくことができなくなったため、父の治療も在宅で行うようになりました。

 

そのため、父はさらに家にいる時間が長くなりました。

 

母が入院していた3ヵ月間は、私の一生のなかで最も父と親密に付き合った時間だったかもしれません。

 

両親の住まいは、いまの私のクリニックから自転車で5分ぐらいのところにありました。夜、診療が終わったらまっすぐ帰って、父と食事に出るのです。これが毎日の日課となりました。

 

父は私が帰るまで夕飯を取らずに待っていました。ヘルパーさんに作ってもらったらどうかと提案しましたが「他人の世話にはなりたくない」と否定します。放っておくと、翌朝までなにも食べずにいるのです。

 

仕方なく午後8時ごろに診療が終わると、急いで実家に戻り、父を車に乗せて外食に出ることにしました。

 

ファミリーレストランのようなところから回転寿司、和食レストランなどいろいろな飲食店へ行きました。とはいっても車で行ける店にも限りがあるので、やがてはなん軒かの店をローテーションで回るようになります。気に入っていたファミリーレストランなどは、週に4回行ったこともあるほどです。店の女の子にすっかり顔を覚えられてしまいました。

 

父は、私と一緒なら、文句を言わずどこへでも行きます。認知症になり、外出することへの不安を抱えていても、信頼している家族となら気持ちよく出かけられるのだと、改めて気づきました。

 

そして、そのようなことは一言も口にしない父ではありましたが、あれだけいろいろな食事を拒否していたのも、実のところ私とともに夕食を取りたかったためかもしれないといまでは思います。

 

父とは、そのあとの何年間かいろいろと世話をすることになるのですが、振り返って思い出すのは、夜診療を終えて帰宅してから一緒に出かけて食べた晩ごはんのことばかりなのです。お店に入って食事をしながら、特になにを話したということでもないのですが、このときの情景が鮮やかに思い返されます。

 

私にとっては、それだけ濃厚な時間だったのかもしれません。

 

やがて母がリハビリ病院から戻り、再び老夫婦による暮らしが始まりました。退院後の母は、特に歩行が以前よりもおぼつかなくなっていました。家のなかでも、トイレに行くのさえ押し車を使わなくてはならなくなったのです。押し車を使ってさえも途中で転倒することがあり、そのつど父が助けに行っていました。

 

まだ元気だった父のほうに、介護の負担がかかっていたのかもしれません。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 


佐野 徹明

医療法人さの内科医院院長

 

 

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医療法人さの内科医院院長 

1994年に近畿大学医学部を卒業し、近畿大学医学部附属病院(現・近畿大学病院)第3内科(血液・腎臓・膠原病内科)で研修を行い、大学院を修了。

2001年に国立大阪病院(現・国立病院機構大阪医療センター)総合内科に勤務したのち、2007年から近畿大学医学部附属病院血液内科で講師を務める。2009年にさの内科医院を開業し現在に至る。

自身も一人で両親を介護で看取った経験があり、患者や介護に悩む家族の希望を第一に考えた治療方針を提案している。

著者紹介

連載48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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