長年経過観察を続けてきた、筆者の母親の頚髄腫瘍に悪化の兆しが見え、手術をするため3ヵ月の入院生活となりました。その間、クリニックの勤務の傍ら、自宅にひとり残る認知症の父を介護しなければなりません。しかしそこには、これまでになく濃密な父と子の時間がありました。在宅医である筆者が、自身の両親の介護や看取りの経験を交えながら、自宅で介護をする家族が抱える問題や悩みを、どのように解決したのかを紹介します。

クリニックからの帰宅後、続けて両親の介護を…

この時期、私のなかではいちばん大変なときだったと記憶しています。

 

母の状態がよくなかったので、人が常に入れ替わりで見ていないといけない状況だったのです。

 

日中は医師の仕事をしていたので、ヘルパーさんと訪問看護師に交互に来てもらい、長年実家に来ていたお手伝いさんもいたため、交代で様子を見て食事の世話などをしてもらっていました。

 

仕事が忙しく帰ってくるのが、毎日夜の8時を過ぎていました。帰ってからも両親の介護があるため、目薬を入れてあげたり、おむつを替えたりと細かな用事はたくさんあります。また、夜中にトイレに起きてくる母が押し車を押して廊下を歩くのですが、暗い廊下で押し車を引っかけて転んでしまうこともありました。隣の部屋で寝ていた私は、その物音で起きて様子を見にいき、トイレと最後ベッドに戻るまで付き添っていました。

 

寝られていたのかとよく聞かれますが、よく寝られていたほうだと思います。疲れ切っていたため、なにも考えずに目をつむればすぐに眠っていました。ただ、たびたびそうして夜中に起きて、また寝てという繰り返しがあったのは事実です。

 

また、母は自分で食事ができない時期でもあったので、私が点滴をしていました。もともと実家に帰る前から、私が母の在宅主治医だったこともあり、訪問看護師にこういうふうにしてくれという指示はすべて私が出していました。

 

実家に戻ったあとは、脱水気味だなと感じたら夜な夜な点滴をしたりということもしていたのです。

 

このあたりは、医師でないとできないことではあると思います。夜中に転んで見にいくようなことはできても、脱水気味であることを見抜くのは、一般の方には非常に難しいと思います。この場合は、在宅担当医に連絡をしなければなりませんが、先述したように、一刻を争うことにもなりかねないので、医師に気を使うことではないと私は思っています。

 

私もおそらく自分が担当医でなければ、夜中でも連絡をしていたでしょう。

 

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48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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