高血圧は内科医に相談…「持病」がある人の白内障手術
高血圧や糖尿病、心疾患といった持病を抱える人では、白内障手術を行うにあたって内科医への確認など、いくつか準備が必要になります。
高血圧で治療を受けている人は念のため、内科医に確認をして白内障手術を受けましょう。高血圧でもほとんどの場合、問題なく白内障治療を行うことができます。
ただ極端に血圧が高い人の場合、注意が必要です。手術当日に心理的な要因で血圧がさらに上がり、危険な状態に陥るリスクがあるからです。
内科医と相談して高血圧の治療を進めながら、手術の時期を決めるようにしましょう。また高血圧によって網膜や網膜の血管がダメージを受けている場合、その治療も必要になります。
糖尿病は「手術中の低血糖」を防ぐ体調管理を
糖尿病は、白内障と深い関わりがあります。糖尿病によって糖尿病白内障が起こるリスクがあるほか、通常の加齢白内障でも糖尿病の人は進行が早くなります。定期的に眼科の診察を受け、手術時期を検討してください。
糖尿病で治療を受けている人は、やはり内科医に確認をとって手術を行います。手術中に低血糖にならないよう、手術前に食事を済ませておきましょう。
また糖尿病の合併症で恐ろしいのは、「糖尿病網膜症(もうまくしょう)」です。進行してしまうと失明につながるので、網膜症を発症しているときは、白内障手術の前に網膜症の治療を行います。ただし、水晶体の状態によって網膜症の治療ができないときは、白内障手術を先に行うケースもあります。
狭心症や脳梗塞…「血流を改善する薬」は一時停止
過去に脳梗塞や心筋梗塞などを経験している人では、血栓を溶かす薬(血栓溶解薬)や血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬〔こうぎょうこやく〕)を服用している人が多くいます。そうした薬を飲んでいる場合、白内障手術の前は、薬の服用を一時停止してもらう場合があります。
通常の白内障手術の角膜切開では出血することはまずありませんが、手術の方法や執刀医の技術によっては出血する可能性があり、その際に血が止まらなくなるのを防ぐためです。
また狭心症や心筋梗塞の発作を起こしたことがある人は、手術中に発作を起こした場合に備え、舌下薬や貼付薬などの準備が必要です。
極めて稀でも…「アトピー皮膚炎」だと感染症のリスク
アトピー皮膚炎の人は、白内障手術にも細心の注意が必要です。アトピー体質の人はもともと網膜が弱く、網膜剥離を起こしやすいという特徴があります。定期的に眼科を受診し、網膜の状態を確認するようにしておいてください。白内障手術の間も常に網膜の状態をチェックしながら、慎重に治療を進める必要があります。
また、まぶたや目の周りに皮膚炎があると、かゆみでついこすってしまい、感染症を起こしたり、眼球を傷つけたりしがちです。私たちのグループでは、2001年から19年間で、20万眼以上の白内障手術を行っていますが、感染症を起こしたのはわずか4眼。4眼のすべてがアトピー皮膚炎の患者でした。
この事実を踏まえると、事前の治療はとても重要であることが分かるでしょう。可能ならば、手術前にアトピーの治療を行っておくと安心です。
「緑内障」は白内障手術と一緒に治療可能
緑内障がある人は、検査時の散瞳薬の使い方などにも注意が必要になります。眼科医の指示に従って検査や治療を進めましょう。
また緑内障と白内障を併せ持つ人に対しては、最近新しい治療法がいくつも登場しています。たとえば、2010年に厚労省が認可した「トラベクトーム」という装置を用いた手術は、従来の緑内障手術よりも目への負担が圧倒的に少なく、特に白内障手術・眼内レンズ挿入と組みあわせて行うことで、眼圧下降効果が高まります。
また2016年には「アイステント」という器具を使った緑内障手術が認可され、白内障との同時手術が保険適用になっています。
こうした治療を希望する場合は、これらの装置の取扱いライセンスを持つ医師・医療機関をインターネットなどで調べて相談するといいでしょう。
市川 一夫
日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士
市川 慶
総合青山病院 眼科部長