定年世代の年金収入…1世帯平均は20万円強
総務省『家計調査』(2019年)で「65歳以上の二人以上世帯の収入」に注目すると、「公的年金」による収入は20万2746円。また厚生労働省『令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』で一人当たりの公的年金額を都道府県別に見ていくと、最高額の「神奈川県」で16万6546円、最低額の「青森県」で12万2081円。世帯として年間243万円、一人当たりで考えると146万~200万円近くの年金による収入を手にします(関連記事:『月20万円だったが…老後もらえる「公的年金額」に日本人絶句』)。
年金による収入を考慮すると、年間の世帯の支出は「65~69歳」で87万円。年々支出が減少していくことを考慮しても、20年で2000万円あれば、平均以上の生活がおくれる、そんな見通しがたちます。
「なんだ、平均であれば、老後を心配する必要なんてない」
と安心したでしょうか。しかしそれは数字上の話。50代、60代で、1000万円程度ずつ、貯蓄を増やしていけたなら、年間243万円、世帯で公的年金による収入が手に入ったら……など様々な前提を元にした、数字上の話であることを理解しなければなりません。
さらに老後、家計の心配で切っても切り離せないのが介護の問題。『家計調査』では介護費用も考慮されているので、数字上は平均であれば、いわゆる『老後破綻』とか『介護破綻』といわれるような事態には陥りません。
しかし金融広報中央委員会による『家計の金融行動に関する世論調査』の2020年の結果を見てみると、「金融商品を持ち合わせていない=預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えている部分がない」と回答した二人以上世帯が全体の1.5%。単純計算すると50万世帯が“その日暮らしに近い生活をしている”といえるのです。このような状況で、50代から1000万円ずつ貯蓄を増やしていけるでしょうか(関連記事:『世論調査「平均貯蓄1751万円」も、100万人以上が貧困の絶望』)。
やはり危機感をもって早め早めの資産形成以外に、安心した老後設計は難しいといえそうです。