矯正視力が良くても「手術要検討」のケース
一方で、矯正視力は出ているけれど、「生活に不自由」が生じるという場合も、手術を受けたほうがよいでしょう。特に車の運転をする人では、白内障で日の光や対向車のライトがまぶしくて見えづらいといった状態は、大変危険です。
私は以前、市バスの運転手の方の白内障手術をしたことがあります。この方は40代で眼鏡での矯正視力は1.2。水晶体の1ヵ所が曇っているだけの軽度の白内障でしたが、時間帯によって逆光の日差しがまぶしく、信号や交通標識が見えづらいということで、手術を決断されました。
また白内障が進行すると、色の見え方も変わってきます(図表2、3)。絵画や印刷、デザイン、インテリア関係など色にかかわる仕事をされている方も、色の見え方に影響が出ていないかチェックしながら、手術時期を考える必要があるでしょう。
ほかにも老眼がかなり進んでいるけれど、仕事などの都合で眼鏡がかけられないという人や、不眠や抑うつ症状、高血圧や認知症がある白内障の人も、早めに手術を検討してください。手術によって改善できるケースがあります。
このように白内障の症状や進行度、生活に必要な視機能などは人によってそれぞれ異なります。必要があれば40~50代で手術をされる方もいますし、80代、90代になって手術を決意される方もいます。自分にとって最適なタイミングを見極め、手術に臨みましょう。
市川 一夫
日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士
市川 慶
総合青山病院 眼科部長