「2/22~3/1のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・先週の米ドル/円は一時106円を上回ったものの、その後は米金利上昇が続くなかでも、上値重い展開となった。これは、金利上昇が悪材料となり、米国株の上値も重くなったことが一因か。
・また、対豪ドルなどでは米ドル安値更新となり、これも対円での米ドル高にとって足かせとなった可能性。豪ドル高・米ドル安の背景には、コモディティー相場上昇の影響がありそうだが、コモディティー相場も短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっている。
週後半伸び悩んだ、対円での米ドル高
米ドル/円が一時106円を超えるまで上昇した原因については、米金利が上昇し、日米金利差米ドル優位が拡大した影響が大きかったといえるでしょう(図表1参照)。
ただ、そんな米金利、たとえば米10年債利回りは、週後半も上昇傾向が続き1.3%を超えましたが、上述のように、米ドル/円は一時105円台前半へ反落するなど上値の重さが目立つところとなりました。
理由の一つには、米国株の上値が重くなった影響があったといえます。では、なぜ破竹の快進撃が続いてきた米国株が、上昇足踏みとなったのでしょうか。これについては、米金利上昇が株価にとって悪材料になってきた可能性があるのです。
株高の足踏みが米ドル高・円安に影響を及ぼしている?
1月21、22日に開催されたECB金融政策会合の議事録が公表されたのち、シュナーベル理事の以下のような発言が一部で注目されました。
「株価は最終的に、世界的な実質利回り上昇から影響を受ける可能性がある」
「いっそうの持続的な実質金利上昇は、株式の相対的な魅力を急速に低下させ、それによってより広範なリプライシングをもたらすリスクがある」
確かに、米10年債利回りに対するNYダウ益回りは、昨年3月の世界的な株大暴落、コロナ・ショック後に10倍以上にも急上昇しましたが、足元では2倍程度まで低下してきました(図表2参照)。債券に対する株の優位性が大きく後退し、コロナ・ショック以前の数値まで戻ってきました。
これはまさに、上述のシュナーベル理事発言のなかにあった「株式の相対的な魅力低下」を示しています。いずれにしても、株高の足踏みが、米ドル高・円安の足踏みをもたらしている可能性が高いのです。
米金利は、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まる
またこれまで上昇傾向が続いてきた米金利も、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まっています。
米10年債利回りの90日MA(移動平均線)からのかい離率はすでにプラス40%近くまで拡大し、経験的には「上がり過ぎ」懸念がきわめて高くなっているといえます(図表3参照)。
こういったなかでは、きっかけ次第で、米金利も「上がり過ぎ」の反動から低下に転じる可能性があります。以上のようなことが、米ドル高・円安も一本調子では進みにくくなっている一つの背景ではないでしょうか。
「対豪ドル」では、米ドル安値更新…その原因は?
ところで、豪ドル/米ドルの場合は、この間の豪ドル高値・米ドル安値を先週更新、0.78米ドルを大きく上回ってきました。米ドル高の足踏みどころか、豪ドルに対しては米ドル安再燃となったわけです。
これは、原油相場などの資源価格、そしてコモディティー相場全般の上昇が続いた影響が大きかったと考えられます。代表的な資源国通貨とされるだけあって、豪ドルはコモディティーの総合的なインデックスであるCRB指数と高い相関関係があるのです。
WTIが先週は一時60米ドルを大きく超えて一段高となるなか、このところ足踏みが続いていた豪ドル高・米ドル安も追随するところとなりました(図表4参照)。そしてこのような、豪ドルなどに対する米ドル安が、対円での米ドル高の足かせになったといえるでしょう。
では、原油相場などコモディティー相場の上昇が続き、資源国通貨の豪ドルも一段高に向かうところとなるのでしょうか。実は、コモディティー相場も短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっているようです。たとえば、CRB指数の90日MAからのかい離率は、2000年以降の最高に近いところまで拡大してきました(図表5参照)。
以上のように見ると、コモディティー相場も目先的には上昇にも限界があり、むしろきっかけ次第で「上がり過ぎ」の反動が入るようなら、下落リスクが高まる可能性すらあるのです。
豪ドル/米ドルが、そんなコモディティー相場と高い相関関係にあるということは、豪ドル高・米ドル安も、目先的には終わりに近いということかもしれません。その意味では、豪ドルなどに対する米ドル安が対円にも波及、米ドル安・円高が大きく広がる可能性は低いといえます。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
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