「2/15~2/21のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・先週、米ドル/円は一時104円半ばまで反落。米雇用統計発表後、米金利低下となったことが主因か。米金利は短期的な「上がり過ぎ」懸念が強く、最近の傾向として注目イベントの雇用統計発表後にその修正が入りやすかった。
・米景気との関係からすると、金利低下は一時的でトレンドは上昇の可能性。最近のパターンを参考にすると、今週中にも米金利上昇再開に向かう可能性あり。
「雇用統計発表後に米金利低下」の舞台裏
2月に入り105円台後半まで上昇した米ドル/円でしたが、先週は一時104円半ばまで反落しました(図表1参照)。
これは、金利差米ドル優位拡大が、105円以上の米ドル高に追随できなかったことが要因だと考えられます(図表2参照)。
米金利上昇は、2月5日の米雇用統計発表のタイミングで一旦頭打ちとなり、低下に転じていました(図表3参照)。
問題はなぜ、米雇用統計発表の後から米金利が低下に転じたかということです。「雇用統計の結果が期待ほど強くなかったから」といった解説が多く見受けられましたが、果たしてそうなのでしょうか。
米長期金利、10年債利回りの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、プラス30%近くまで拡大していました(図表4参照)。これは、経験的に米金利の短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたことを示しています。その意味では、先週にかけて米金利が低下に転じたのは、「上がり過ぎ」の反動が入ったことが大きかったといえます。
このところの米金利、10年債利回りの循環的ピークは、昨年11月10日、今年1月12日(図表3参照)、どちらも雇用統計発表の2営業日後に発生しています。そして今回は上述のように、雇用統計発表当日に米金利がピークアウトしました。これらの情報から、以下のような推測が可能です。
このところの米金利の急ピッチの上昇により、米金利は短期的には「上がり過ぎ」圏での推移が多くなっています。ただ、注目イベントである雇用統計の結果を受けて、一段と「上がり過ぎ」拡大に向かう可能性もあります。したがって、雇用統計の結果を受けても、「上がり過ぎ」拡大に向かわないことを見極め、「行き過ぎ」の修正が広がったことが考えられます。
米金利上昇と米ドル「売られ過ぎ」修正
では、米金利はさらに低下に向かうのでしょうか。米金利、とくに米10年債利回りからインフレ率を引いた米実質長期金利は、代表的な米景気指標であるISM製造業景況指数と基本的に高い相関関係が続いてきました(図表5参照)。まさに、「金利は景気で決まってきた」といえます。
そんなISM指数との関係からすると、米金利には大幅な上昇リスクがありそうです。これまでの両者の関係からすると、足元で1.2%程度の米10年債利回りは、2%以上へ大幅に上昇する可能性があるのです。米金利は短期的な「上がり過ぎ」修正をこなしながら、基本的には一段の上昇に向かう可能性が高いといえるでしょう。
ちなみに、昨年11月10日にピークアウトした米10年債利回りは、10日程度でボトムアウト、そして今年1月12日にピークアウトした米10年債利回りは、15日程度でボトムアウトしました。
「上がり過ぎ」修正に伴う米金利低下は10~15日程度で底打ち、上昇再開に向かうと考えれば、今回2月5日の米10年債利回りピークの10~15日後である今週中にも米金利低下は一巡し、上昇再開に向かう可能性があるのです。
ヘッジファンドなどの取引を反映しているCFTC統計の投機筋の米ドル・ポジションは、依然として大幅な売り越しが続いています(図表6参照)。その意味では、米ドルはかなり「売られ過ぎ」懸念が強い状況にあるのです。
米ドルの金利低下はあくまで一時的に過ぎず、トレンドは基本的に上昇ということなら、米金利上昇などをきっかけに、「売られ過ぎ」の反動に伴い買い戻されやすいといった構図がこの先も続く可能性が高いといえます。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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