新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、窮地に立たされている中小企業。そこで注目されているのが、3月に公募開始のアナウンスがされている「事業再構築補助金」です。企業再生のスペシャリストである坂本利秋氏が、最新情報のポイントをわかりやすく解説します。

完全なる「新規事業」も補助の対象に

【対象となる事業再構築の範囲】

 

コロナ前:居酒屋を経営していたところ、コロナの影響で売上が減少

コロナ後:店舗での営業を廃止。オンライン専用の弁当の宅配事業を新たに開始。
 

 

コロナ前:紳士服販売業を営んでいたところ、コロナの影響で売上が減少。

コロナ後:店舗での営業を縮小し、紳士服のネット販売事業やレンタル事業に、業態を転換。

 

これらは販売する相手、販売する商品は維持しつつ、提供の仕方を変えるケースです。新型コロナ禍では、ある意味本業の強みを残した王道もしくは典型的な業態展開で、補助金対象事業であることに違和感はありません。

 

コロナ前:航空機部品を製造していたところ、コロナの影響で需要が減少。

コロナ後:既存事業の一部について、関連設備の廃棄等を行い、医療機器部品製造事業を新規に立上げ。

 

全面的ではないようですが、航空機部品メーカーから医療機器部品メーカーへの転身です。先の2つの事例と比べると変化が大きく感じます。販売する相手、商品が異なります。ただ精密機器の部品製造の強みは活かしていることはわかります。

 

コロナ前:高齢者向けデイサービス事業等の介護サービスを行っていたところ、コロナの影響で利用が減少。

コロナ後:デイサービス事業を他社に譲渡。別の企業を買収し、病院向けの給食、事務等の受託サービス事業を開始。

 

これは注目に値します。顧客も商品・サービスも異なりますし、企業の強みを活かしているようにも思えません。そもそも、赤字のデイサービス事業を譲渡しても二束三文のはずです。二束三文の譲渡代金で企業など買収できるのか。買収代金の捻出方法はさておき、筆者がここで伝えたいのは、完全に新規と言える事業へ進出する場合も補助事業対象になるということです。

 

筆者の主催する中小企業の再生講座では「中小企業の再生では本業回帰が王道。その本業の中で強みが最大限発揮できるまで商品、商圏を絞るべき。資金力も優秀な人材もそろうスタートアップベンチャー企業でも数年で大半が廃業する。資金力がなく、人材不足の中小企業が新規事業を始めても奇跡でも起きない限りうまくいくはずがない」と伝えていましたが、この補助金で考えを改めるべきかもしれません。

 

いずれにせよ、何をどうやっても本業での黒字化が見えない企業にとっては朗報です。このケースでは、建物改修費用、新サービス提供のための機器導入費や研修費用が補助対象と記載されています。残念なのは企業の買収代金はこの補助金の対象外であることです。

 

今回の発表から、第1次の公募期間は3月から4月であろうことが分かりました。別の複数回公募の補助金の実績を見ても、第1次の採択率が高く、徐々に下がっていくのが一般的です。早めの申請は、早めの補助金給付につながり、いち早く赤字から脱却することにつながります。もう待っている時間はありません、スタートしましょう。

 

 

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