大学病院に勤務していたにもかかわらず、年老いた両親の介護のため父が経営する医院も承継し、外来と在宅医もこなすように…。躊躇することなく踏み切れたのは、幼いころから見ていた、患者に寄り添う父の背中があったからでした。「私でなければできないような診療を」との思いで、筆者が描いた今後の展望とは?

開業と同時に、在宅医もスタートさせた「ある理由」

開業と同時に「在宅医」もスタートさせたのは、実はそうした思いもあったからなのです。

 

在宅医療というのは、往診が基本になります。月に数回、患者さんのご自宅を訪ねて、そこでの診療が中心となります。患者さんは病院の外来に通うことなく医師の診療を受けられるため、移動がしんどくなっている患者さんには最適の医療だろうと思います。

 

私の両親は、介護こそ自宅で行っていたものの、母は身体が不自由であるにもかかわらず、手術をするまでは基本的に通院していましたし、父のほうも母の付き添いが困難になって以降、在宅診療を始めるまでは通院をしていました。

 

大病院などが入院期間を1、2ヵ月と期限を設け、ベッドを空けるようにし始めたのは、ここ10年ほどのことでしょうか。診療報酬との兼ね合いもありますので、病院側が悪いわけではないのですが、患者さんにしてみれば「放り出された」という思いが強く残ってしまいます。がん患者さんであっても、そうした境遇に立たされ、そのため「がん難民」などという言葉も聞かれるようになりました。

 

こうした制度改正もあって、在宅医療制度を多くの患者さんに受け入れてもらおうという動きが進められてきたわけです。

 

いまでは、病院で受ける治療の過半数を、現在の在宅医療で受けることができます。エコー写真も撮れますし、がんの末期であっても、自宅で緩和ケアが受けられたりします。手術や大型の機器を使った検査以外はある程度可能なのです。

 

最期を病院ではなく自宅で過ごすことを望む患者さんも増えてきたことで、在宅医は一般に浸透しています。

 

ただ、当時はそこまで在宅医が深く浸透していなかったこともあり、これまでの血液内科での経験をもとに、私は在宅医を始めることにしたのです。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

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48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

48歳、独身・医師 在宅介護で親を看取る

佐野 徹明

幻冬舎メディアコンサルティング

開業医である父が突然倒れた。父の診療所を継ぎ、町の在宅医としてそして家では介護者として終末期の両親と向き合った7年間。一人で両親を介護し看取った医師による記録。

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