ダラスを本拠とする世界最大(2019年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)。同社によるレポート「コロナ禍のリテール動向とその未来は?−アフターコロナの出店戦略」より一部抜粋し、コロナ収束後の小売業の実店舗では、どのような「形態・業態」に注目が集まると考えられるか、見ていきます。

出店ニーズが高まる小売業の実店舗の「業態」とは?

こうした3つのポイントを踏まえると、新型コロナウイルス収束後の、いわゆる「アフターコロナ」時代における主要なリテールエリアへの出店ニーズの牽引役は、「ショールーム型店舗」「ポップアップストア」「ラグジュアリーブランド」といった形態や業態となりそうだ。

 

これらに共通しているのは、実店舗が商品やブランドの「体験」の場として機能していることだ。

 

たとえば、ショールーム型店舗のなかには国内未発売となっている海外製品や現在開発中の試作品を陳列し、自由に手で触れることを推奨しているところがある。また、AI(人工知能)の機械学習機能を使ってレコメンドを作り、消費者が楽しみながら自分に合う商品を探すためのサポートサービスを提供しているところもある。いずれも、ECサイトの販売を強化しつつ、“実際の商品をみたい”という消費者の欲求を満たそうとしている。

 

ポップアップストアは、期間と場所が限定されたイベントだということが消費者に希少性を感じさせている。また、出店目的の1つがSNSを使った口コミの拡散、いわゆるフリーパブリシティによるリーチの拡大であるため、SNSに思わず投稿したくなるような驚きや感動を創出する企画がおこなわれている。

 

CBREの調査では、2019年の路面店舗のポップアップストア数は対前年比81.8%増えており、その多くは表参道・原宿エリアに集中している。

 

ラグジュアリーブランドは、その価値がブランドイメージによって確立されているといっていい。消費者にイメージを伝達する手段として、ブランド独自の世界観にもとづく実店舗の作り込みや、実店舗を出店する際のエリア/立地戦略、ホスピタリティの高いカスタマーサービスに力を入れている。

 

すなわち実店舗は、消費者一人ひとりに対して特別な買いもの時間(カスタマーエクスペリエンス)を提供することで、ブランドロイヤリティの高いファンを醸成する場となっている。

 

このように、これからの実店舗は、わざわざ実店舗に足を運びたくなる動機を消費者に持たせることが、必要不可欠となるだろう。

 

新型コロナウイルスの収束がみえない直近の出店ニーズは、予算がある一部のリテーラー、もしくは既存店舗からの移転を余儀なくされるなどの理由があるリテーラーに限定されている。今後、新型コロナウイルスが収束することで、体験型店舗の出店が増えると考える。

 

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