ダラスを本拠とする世界最大(2019年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)。同社によるレポート「コロナ禍のリテール動向とその未来は?−アフターコロナの出店戦略」より一部抜粋し、コロナ収束後の小売業の実店舗では、どのような「形態・業態」に注目が集まると考えられるか、見ていきます。
アフターコロナの小売業…「出店戦略」3つのポイント
主要なリテールエリアに路面店舗を出店するリテーラーのなかには、新型コロナウイルス収束後の出店戦略が感染拡大前に比べて変わったと考えるリテーラーが多くみられている。大きなポイントとして3つ挙げられる。
1つ目は、実店舗とECサイトの連携強化だ。緊急事態宣言による営業自粛などで実店舗の売り上げが激減した影響から、ECサイトの販売を強化するリテーラーが増えている。
そういったリテーラーのなかには、実店舗をブランディング、商品体験の場と位置づけているところがある。必ずしも商品を販売することを主な目的とはしない、ショールーム型店舗になる。
例として、ECサイトで気になる商品を選んだ消費者が、実店舗で実物を試着した上で購入するという仕組みをテスト運用しているところがある。実店舗の在庫切れによる販売機会ロスを防ぐことが可能だ。
2つ目は、出店目的に合わせた店舗サイズや出店時期の適正化だ。緊急事態宣言による営業自粛などで実店舗の売り上げが激減したリテーラーは多く、賃料の支払いが大きな経営負担となっていた。そのため、賃料総額が高額となる大型店舗は、ブランディングなどをおこなう旗艦店舗に限定し、その他は販売効率や利便性の高さを重視した小型店舗を増やす意向を持っているところがある。
また、長期契約を結ぶ常設店舗よりも、新商品をプロモーションしたい時期などに合わせた期間限定のポップアップストアの出店を考えているところがある。すでにショッピングセンターのなかには、短期契約かつ完全歩合のテナントを受け入れはじめたところもある。
3つ目は、出店エリアのシフトだ。緊急事態宣言下で主要なリテールエリアを訪れる人の数は激減し、現在も感染拡大前の水準には戻っていない。そのため、リテーラーのなかには売り上げが安定している生活圏への出店を重視する動きもある。
特に、インバウンド需要の取り込みを狙って主要なリテールエリアに出店していたドラッグストアのなかには、生活圏に出店することで日本人消費者の売り上げを伸ばそうとする動きがみられている。ただし、ラグジュアリーブランドなどブランドイメージを重要視するリテーラーは、これからも主要なリテールエリアのハイストリートに出店しようとしている。
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シービーアールイー株式会社(CBRE)
リサーチ
ディレクター
CBRE日本法人は、不動産賃貸・売買仲介サービスにとどまらず、各種アドバイザリー機能やプロパティマネジメント、不動産鑑定評価などの17の幅広いサービスラインを全国規模で展開する法人向け不動産のトータル・ソリューション・プロバイダーです。CBREの前身となった生駒商事が1970年に設立されて以来、約半世紀に亘り、日本における不動産の専門家として、全国10拠点で地域に根ざしたサービスを展開してきました。
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CBREグループ(NYSE:CBG)は、「フォーチュン500」や「S&P500」にランクされ、ダラスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社です(2021年の売上ベース)。全世界で105,000人を超える従業員(ターナー&タウンゼントの従業員を除く)が、100カ国以上でクライアントに対し、幅広いサービスを提供しています。不動産売買・賃貸借の取引業務、プロパティマネジメント、ファシリティマネジメント、プロジェクトマネジメント、事業用不動産ローン、不動産鑑定評価、不動産開発サービス、不動産投資マネジメント、戦略的コンサルティングを主要業務としています。
2007年シービーアールイー入社。投資家や一般事業会社所有の不動産に対して、有効活用を提案するコンサルティング業務に従事。2010年リサーチに異動。グローバルならびにAPACレポートの日本パート作成に携わり、海外クライアントに対して日本のオフィス、物流施設、商業施設の賃貸市場に関する情報を発信。2014年から商業施設の賃貸市場に特化し、各種レポートの執筆とともに国内外のクライアントに対してマーケットの考察を提供している。グラスゴー大学院社会科学部、早稲田大学経営管理研究科卒業。
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