前回のテーパリングで市場はどう反応したか

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●市場参加者の中には、量的緩和を段階的に縮小するテーパリングの動向を警戒する向きが多い。

●ただ前回のテーパリング期間、米10年国債利回りは緩やかに低下し、ドル円は横ばい推移だった。

●日米株価も落ち着いた反応、つまり当局と市場の十分な対話で、テーパリングの混乱は回避可能。

市場参加者の中には、量的緩和を段階的に縮小するテーパリングの動向を警戒する向きが多い

テーパリングとは、英語の「taper(先細る)」から生まれた言葉であり、中央銀行が、国債などの金融資産を買い入れる量的緩和について、新規の買い入れ額を段階的に減らし、終了に向かわせる手法のことをいいます。米連邦準備制度理事会(FRB)は2014年1月から10月までテーパリングを実施した経緯があり、市場では、米国の景気がこの先一段と回復すれば、再びテーパリングが行われるとの見方があります。

 

一般に、中央銀行による国債買い入れの縮小は、需給緩和による国債価格の下落(利回りの上昇)要因となります。また、2013年5月には、バーナンキFRB議長(当時)が予期せぬタイミングでテーパリング実施を示唆したことから、米国債利回りが急上昇し、金融市場が混乱したという出来事もありました。そのため、市場参加者の中には、テーパリングの動向を警戒する向きが多くみられます。

ただ前回のテーパリング期間、米10年国債利回りは緩やかに低下し、ドル円は横ばい推移だった

そこで、今回のレポートでは、過去のFRBによるテーパリングで金融市場はどう反応したかを検証します。まず、米10年国債利回りの動きをみると、2013年5月1日は1.63%水準(取引終了時点、以下同じ)でしたが、5月22日の前述のバーナンキ発言を受けて上昇ペースが加速し、2013年末には3%台に達しました(図表1)。ただ、実際にテーパリングが始まると利回りは緩やかに低下し、2014年末には2.17%水準まで戻りました。

 

(注)データは2013年1月1日から2014年12月31日。色付き部分はテーパリングの実施期間(2014年1月から10月)。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

[図表1]米10年国債利回りとドル円レートの推移 (注)データは2013年1月1日から2014年12月31日。色付き部分はテーパリングの実施期間(2014年1月から10月)。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

次に、ドル円に目を向けると、2013年5月1日は1ドル=97円39銭水準でしたが、バーナンキ発言で円高が進行し、94円31銭水準をつけました(図表1)。その後は横ばい推移が続きましたが、年末にかけてドル高・円安が進み、2013年末には105円台を回復しました。2014年のテーパリング期間は、ほぼ横ばいでしたが、10月31日に日銀が追加緩和を決定するとドル高・円安が加速し、2014年末には120円近辺に達しました。

日米株価も落ち着いた反応、つまり当局と市場の十分な対話で、テーパリングの混乱は回避可能

最後に、株式市場の動きを確認すると、日経平均株価、ダウ工業株30種平均とも、2013年5月22日のバーナンキ発言後、一時的に下落したものの、2013年末にかけて持ち直しました(図表2)。テーパリングの期間中、日経平均は上値の重さが目立ちましたが、前述の日銀の追加緩和で、年末にかけて持ち直しました。ダウ平均は何度か調整が入ったものの、底堅さを維持しました。結局、2014年の年間上昇率は、両指数とも7%を超えました。

 

(注)データは2013年1月1日から2014年12月31日。色付き部分はテーパリングの実施期間(2014年1月から10月)。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]日経平均とダウ平均の推移 (注)データは2013年1月1日から2014年12月31日。色付き部分はテーパリングの実施期間(2014年1月から10月)。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

2013年5月のバーナンキ発言で、市場は一時的に動揺したものの、結果的にテーパリング開始を織り込みました。そのため、2014年に実際にテーパリングが始まると、市場は比較的落ち着いてこれを受け止め、少なくとも強いリスクオフ(回避)の反応はみられませんでした。したがって、今後、再び米国でテーパリングが実施されることとなっても、FRBが事前に市場との対話を十分に行えば、大きな混乱は回避できるとみています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『前回のテーパリングで市場はどう反応したか』を参照)。

 

(2021年2月17日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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