●日経平均株価は、流動性相場のなかで景気回復に先行して大きく上昇し、30,000円台に到達。
●上昇のペースは想定よりも速く、一旦調整も、日経平均株価の次の上値目処は31,396円70銭。
●景気と業績の回復は織り込み済みで株高の持続性はその後の材料次第、長期金利にも要注意。
日経平均株価は、流動性相場のなかで景気回復に先行して大きく上昇し、30,000円台に到達
日経平均株価は2月15日、30,084円15銭で取引を終え、1990年8月2日以来、約30年半ぶりに終値ベースで30,000円の大台を回復しました。直近の決算で国内企業の業績回復傾向が確認されたことや、米追加経済対策の早期実現期待が強まったことなどが好材料となり、日経平均株価は1月29日(終値は27,663円39銭)から、わずか10営業日で、2,400円超上昇しました。
足元の株価水準は、実体経済から乖離しているとの声も多く聞かれますが、株式市場は一般に半年から1年程度先の景気動向を見越して動くため、先行きの景気回復期待が十分強ければ、足元で景気が低迷していても、株価は上昇する傾向があります。また、現在は、金融市場に余剰資金が溢れ、株式などに流入しやすい「流動性相場」が形成されているため、これが株高の度合いを強めていると考えられます。
上昇のペースは想定よりも速く、一旦調整も、日経平均株価の次の上値目処は31,396円70銭
弊社は、2021年の株式市場を取り巻く環境は総じて良好と考えており、日本株は上値を試す展開を予想しています。ただ、年初からの上昇ペースは想定よりも速く、日経平均株価は本日、弊社が1-3月期の上限とみていた30,400円水準を突破しました。また、相場に過熱感も出ており、テクニカル分析の1つである「RSI(相対力指数)」をみると、昨日時点で71.5%となっており、一般に買われ過ぎとされる70%を超えています。
さらに、日経平均株価は足元で、長期上昇トレンドの上値抵抗線も超えてきており(図表1)、この先は上昇にやや一服感が出やすくなることも想定されます。なお、別のテクニカル分析である「フィボナッチ・リトレースメント」で日経平均株価の上値目処を確認すると、過去最高値から過去最安値までの下げ幅から76.4%戻した水準の31,396円70銭が意識されます(図表2)。
景気と業績の回復は織り込み済みで株高の持続性はその後の材料次第、長期金利にも要注意
日経平均株価は30,000円の大台を回復しましたが、流動性相場そのものに変化はないため、引き続き上値を試す展開が見込まれます。ただ、ここまでの株価の上昇で、「大規模な米追加経済対策の早期実施やワクチン接種の普及により、国内の経済活動は正常化し、企業業績は回復する」というシナリオは早々に織り込んだと思われます。そのため、株高の持続性は、シナリオの実現後を見通す材料次第と考えます。
つまり、国内経済は正常化後も成長が続き、企業業績は回復後も好調さが続く見通しとなれば、株高は持続し、そうでなければ持続しないことになります。また、経済活動の正常化と企業業績の回復シナリオが実現した時点で、世界的にも長期金利は相応に上昇していることが予想されます。緩やかな上昇なら、株価への影響は限定的ですが、短期間での急騰は、株式市場の波乱要因となるため、今後、国内外の長期金利の動向にも注意が必要です。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価は30,000円台を回復~ここからの展開を考える』を参照)。
(2021年2月16日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト