ダラスを本拠とする世界最大(2019年の収益に基づく)の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)。同社によるレポート「コロナ禍のリテール動向とその未来は?−アフターコロナの出店戦略」より一部抜粋し、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する緊急アンケート」の結果から、コロナが銀座、表参道、原宿、新宿、渋谷、栄、心斎橋、天神エリアの主要な通りに出店している小売業者に与えた影響と、「今後も積極出店を続ける」と答えた小売業の理由を見ていきます。

賃料減額以外の支援措置:42%の小売業者に止まるが…

賃料減額以外の支援措置として、オーナーに賃料の支払猶予や敷金返還を要請しているかを訊いたところ、要請していると回答したリテーラーは42%に止まった。多くのリテーラーが、賃料減額の要請を選択していることがうかがえる。

 

交渉内容は、3ヵ月間の賃料の支払猶予、3ヵ月分の敷金の返還と回答したリテーラーがそれぞれ最も多かった。賃料の減額期間と同じく、売上回復にはさらなる時間が必要だと判断したリテーラーのなかには、賃料の支払猶予期間の延長を交渉しているところもある〔図表5〕

 

[図表5]賃料減額以外の支援処置についてオーナーと交渉していますか?※サンプル数(n)は81

従来の出店計画からの変更:約22%が解約または見込み

新型コロナウイルスの感染拡大によって、従来の出店計画に変更が生じたかを訊いたところ、既存店舗を「解約した、または今後解約する店舗がある」と回答したリテーラーが21.8%存在した。インバウンド需要の取り込みを狙った既存店舗を解約した、損益分岐点上にあって改善が見込めない既存店舗の解約を決めた、といった理由が挙げられている。

 

また、募集物件の出店検討または申し込みを「とりやめた、または今後とりやめる店舗がある」と回答したリテーラーも21.8%存在した。その理由として、資金の減少によって実店舗への投資基準が厳しくなった、新型コロナウイルスの感染拡大前に想定した客数や売上高の達成が困難だと判断した、ECにおける販売強化が優先されたなどが挙げられている。

 

日本で新規出店を検討していた海外リテーラーのなかには、2020年内の新たな物件投資を凍結したところが複数ある。また、海外への移動が制限されていることから、物件視察が叶わず協議が停滞しているところもある。そのため、現在テナントを募集している物件への引き合いは、新型コロナウイルスの感染拡大前に比べて弱さがみられている〔図表6〕

 

[図表6]従来の出店計画に変更が生じましたか? ※既存店舗、出店検討/申し込みのサンプル数(n)はともに78

収束後の出店戦略:約29%が「今後も積極出店」の理由

最後に、アフターコロナの出店戦略について訊いたところ、「向こう1年程度は出店を抑制する」(34.2%)という回答が最も多く、「今後も積極的に出店する」(29.1%)を上回った。

 

「出店を抑制する」理由としては、不採算店舗の閉店、実店舗網の再編や統合に注力する、これまで以上に想定売上や賃貸条件の設定に慎重となるため、などが挙げられている。また、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、消費者の価値観や行動が変わる可能性がある。その方向性を見極めながら実店舗の在り方を考えるため、新たな出店には時間が必要だという理由も挙げられている。

 

一方、今後も積極的に出店するリテーラーのなかには、現在の状況を好機とみているところがある。企業再編や統合などで好立地の空室が増えること、出店ニーズの減少などでリーズナブルな賃料設定が増えることを想定しているようだ〔図表7〕

 

※サンプル数(n)は81
[図表7]収束後の出店戦略について ※サンプル数(n)は81

 

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