本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ドル円は、1月6日の102円台後半から、2月5日の105円台後半まで、ドル高・円安が進行した。

●ドル高・円安の背景は米経済活動の早期正常化期待、ただ200日移動平均線でいったん調整。

●ドル安相場はこの先、米追加経済対策などによる経済活動の正常化が進む過程でドル高相場へ。

ドル円は、1月6日の102円台後半から、2月5日の105円台後半まで、ドル高・円安が進行した

米ドルは、コロナ・ショック後の2020年3月31日から12月31日までの間、主要33通貨のうち、日本円などを含む29通貨に対し下落しました。米国では、コロナ・ショックを受け、大型の経済対策が実施され、量的緩和も再開されたことから、景気回復見通しで期待インフレ率が大きく上昇したものの、量的緩和で名目金利の上昇が抑制されたため、実質金利がマイナス圏に沈み、その結果、ドル安が進んだと推測されます。

 

 

なお、日本円も同期間、主要33通貨のうち、26通貨に対し下落しており、弱い通貨同士のドル円は、昨年4月以降、ゆっくりとドル安・円高が進みました。ただ、今年に入り、この流れに変化がみられるようになりました。ドル円は、1月6日の取引時間中に1ドル=102円59銭水準をつけたあと、ドル高・円安方向に反転し、2月5日には一時105円77銭水準をつけました。

ドル高・円安の背景は米経済活動の早期正常化期待、ただ200日移動平均線でいったん調整

ドル高・円安が進行した背景には、米大統領に就任したバイデン氏が、迅速に大型の追加経済対策を実施し、コロナ対策を推進することで、米国の経済活動は早期に正常化に向かうとの強い期待があると思われます。米10年国債利回りも、1月に1%水準を回復した後、上昇傾向をたどり、足元では1.2%超えをうかがう動きがみられるなど、ドル買い要因になっています。

 

また、移動平均線に目を向けると、これまでドル円の上値をおさえていた75日移動平均線を、1月28日に上抜けたところで、ドル買い・円売りに弾みがついた様子が確認されます(図表1)。ただ、次の上値抵抗線である200日移動平均線が、一段のドル高・円安の進行を妨げる格好になっており、ドル円は昨日、104円50銭水準まで、ドル安・円高方向へ押し戻されています。

 

(注)データは2020年9月1日から2021年2月9日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ドル円相場と移動平均線 (注)データは2020年9月1日から2021年2月9日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

ドル安相場はこの先、米追加経済対策などによる経済活動の正常化が進む過程でドル高相場へ

弊社は今年、時間の経過とともに米景気回復が進むという前提のもと、米長期金利が緩やかに上昇することで、ドル円はドル高・円安の流れに転じ、ドル安相場は終了に向かうと考えています。そのため、年明け以降のドル円の方向性に違和感はありませんが、想定よりもドル高・円安の進行速度がやや速かったため、200日移動平均線付近での調整も、また違和感はありません。

 

米ドルは、2020年12月31日から2021年2月9日までの間、主要33通貨のうち、15通貨に対し下落したものの、18通貨に対しては上昇し、ドル安地合いに変化がみられます。ただ、米実質金利は依然マイナス圏にあり(図表2)、ドル安圧力はしばらく残ると思われます。ドル安相場はこの先、米国で追加経済対策が実施され、ワクチンの接種が普及し、経済活動の正常化が進む過程で、ドル高相場へ移行していくと考えます。

 

(注)データは2020年11月2日から2021年2月9日。 (出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米実質金利の推移 (注)データは2020年11月2日から2021年2月9日。
(出所)Bloomberg L.P.のデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ドル安相場は終了したのか?』を参照)。

 

(2021年2月10日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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