本業に関連する「社会貢献」を行っているか?
売り手の不動産会社かどうか知るためには、CSRを見ておく必要があります。
これは企業の社会的責任を意味し、端的には「木を植えています」「学校を建てています」などといった社会貢献活動を指します。こちらは自己資本比率とは異なり、会社案内等に掲載されていることが多いようです。
こうした活動については、本業との関係を考えることが必要です。なぜなら売買代金、つまりあなたの35年間毎月支払う住宅ローンには、選択した企業の運営経費やCSRに必要な費用が含まれているからです。
であれば、商品を通じてそれが自分の住み心地に還元されているかは当然ですが、社会に対して有意義に使われているかを確認しておくべきです。
特に昨今は環境意識や企業の社会貢献意識の高まりに合わせて、緑化や環境団体への資金援助をしたり、本社や商品で使用する電力をグリーン電力証書の購入などでCSRに代えたりしています。
これらは大切な行為ですが、逆に言えばお金さえあれば誰にでもできることを独自の社会貢献として謳うようなお手軽CSRとも言えます。
これが本来の意味で、その企業が独自に行うCSRと言えるのでしょうか。企業の社会的貢献にも、その企業の真なる企画力を見抜くポイントがあるのです。
CSRの行っているかどうかで企画力のレベルも分かる
経営学者、社会学者として有名なP・F・ドラッカーは「事業の目的は、顧客を創造することだ」と言っています。
より便利な社会、より人間的な社会を作るために必要な商品を生み、それを世に出すことが企業の社会的な役割です。新商品の価値や提案するライフスタイルなどを広く知ってもらい、既存にない価値観を新たなマーケットとして創造することが企業の役割だと定義すべきと考えます。
たとえば、ソニーが1979年に世界で初めて録音機能のない、ステレオカセットプレーヤー・ウォークマンを発売した時のことです。
6月に新製品発表の記者会見を開いたものの、マスコミの反応は冷ややかで、ほとんど取り上げてもらえない状態だったと聞きます。録音できない商品など売れるはずはない、聴くことだけを楽しむ機械など意味がないというのが、巷の評価だったようです。つまり、既存のマーケットではその価値が理解できない代物だったのでしょう。
そこで、ソニーの宣伝部や国内営業部隊のスタッフたちはウォークマンをつけて外へ出掛け、商品を見てもらう、音を聞いてもらうという作戦に出ます。
JR山手線に1日乗り続けて商品をアピールする、新宿や銀座の歩行者天国で通りかかった人にヘッドホンをつけて音を聞いてもらう、大学の運動会や文化祭で視聴してもらうなど、草の根の働きかけを続けました。
この地道な努力で、ソニーは「歩きながら音楽を聴くというマーケット」の創造に成功し、仕事で疲れた身体を音楽で癒しながら帰路につくという、現代ではなくてはならないライフスタイルを定着させたのです。
私は企業の新商品開発やCSRとは、新しい価値やライフスタイルを市場に認識してもらうための社会的な活動になるべきだと考えています。
企業はCSRを通じて、その企業の社会に対する提案を知ってもらい、消費者はその提案に対する賛同の意を持って商品を購入し、企業の成長を促す。
こうすれば、消費者が払うCSRへのコストは商品のためにも、社会のためにも有効に使われるようになり、そこからさらに新たなマーケットを創造する新商品開発のために、独自の新しい社会貢献活動やボランティアが生まれるという、社会の大きなうねりを生み出すエンジンになるのです。
自分たちが販売している商品に誇りを持ち、社員が活動に参加しているかどうかも、売り手のCSRが意義のあるものかどうかを判断するポイントです。
社員が参加していれば、活動を通じて得た知恵や経験は企業に還元され、商品となって社会に役立ちます。ソニーの社員たちはウォークマン第1号を広めつつ、同時に社会のニーズを学び、それが以降のウォークマンの進化へつながったはずです。
そう考えると、売り手の企業がCSRを行っているとしたら、その内容はもちろん、社員が参加して行われているかどうかも調べてみると、本来の意味での社会貢献が行われているか、あわせてその企業独自の企画力のレベルを確認することもできると思います。