強烈な質問「亡くなったお父さんが…」
長男が後継ぎと決まっている場合、税理士が先に長男の思いを確認しておくのです。自分の優雅な生活のために親の財産を多くもらいたいと思っているのか、実家を自分の代で絶やさないために財産を預かろうと思っているのか――どちらの気持ちが強いのか、長男に率直な思いを確認します。
そのうえで、実家の存続を本当に願っているのであれば、その思いを素直に兄弟姉妹に訴えます。そして、「何とか預からせてほしい」と頭を下げて頼むのです。
頭を下げたらいいというわけではありませんが、それで遺産相続の話し合いがスムーズに進展するケースも多くあります。
世間一般では、相続人は皆平等といわれますが、元の財産の持ち主である親からすれば、単純に、数学的な平等が本当の平等といえないような気持ちを抱いているものです。相続人それぞれの役割により、分け方の比率に上下があることが、本当の意味での平等である場合もあるのではないでしょうか。とりわけ長男が実家を守る場合、相続人のなかでも長男の役割の比重は重いといえるでしょう。
相続の依頼を受けた場合、こうして実際に遺産相続の場に立ち会うケースがよくあります。とくに相続人同士で意見が対立し、話し合いが平行線をたどっているような場合、税理士が間に入ることで、それぞれの気持ちが整理され、話し合いがスムーズに展開するケースが少なくありません。
税理士は中立的な立場で相続人一人ひとりの意見に耳を傾けられるからです。話し合いの雲行きが怪しくなってきた場合、ご仏壇の遺影の写真を見ながら次のようにお伝えすることもあります。
「もし亡くなったお父さん(あるいはお母さん)がいま目の前にいるとしたら、この状況を見て、みなさんにどんな話をされるでしょうね」
そうやって親の存在を改めて感じてもらうことで感情が静まり、冷静に判断できるようにもなるのです。
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