献身的に母の介護を続けた長男一家だったが…
田中さん(長男)の父親はすでに他界し、このたび、母親が85歳で亡くなりました。田中さんは、父親が亡くなるまでは両親とは同居せず、家族でマンションに住んでいました。しかし父親の介護で体を壊した母親の面倒を看るため、父親の死後にマンションを引き払い、母親が住む自宅マンションで同居することになったのです。
しかし田中さんは仕事があるため、母親の面倒は主に妻が看ることになりました。母親は介護の負担で体を壊したことに加え、以前、患ったがんが再発して入退院を繰り返すようになりました。最後は自宅で死にたいと熱望したため、妻を中心に献身的な介護を続けました。そして3年あまりの闘病の末、母親は家族に見守られて安らかに他界したのです。
こうして相続を迎えた田中さんは、妻の献身的な介護を考慮して、長女よりも多くの財産を相続したいと長女に切り出しました。しかし長女はその田中さんの申し出に納得せず、法定相続分の取り分を主張してきたのです[図表]。
長女は遠方に住んでいることもあり、何度か見舞いには来てくれたものの、一度も介護を手伝ってくれたことはありません。当初、長女はお兄さんの良いようにしてくれたらいいと言っていましたが、いざ遺産分割という段階になった際、急に夫に強く主張され、法定相続分の取り分を要求してきたのです。
簡易な方法にとどめますが、たとえば自宅マンションの4000万円を相続評価額に換算すれば、よくて60%の2400万円程度でしょう。それに現預金の2000万円をプラスして4400万円となります。
今回のケースでの問題は、まず田中さんの奥さんが母親の献身的な介護をしてきたという寄与分が認められるかどうかです。次に寄与分が認められなければ、相続財産の半分の3000万円をどうやって長女に払うかという問題も出てきます。
寄与分は相続人同士の感情論に発展するケースが多いため、話し合いにより、お互いに納得のいく解決策が見出せるかどうかにかかっています。
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