「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

所得税・住民税では株式投資のほうがメリットが

一方、株式の場合は申告分離課税を選択することができ、いくら給与をもらっている人でも税率には影響しません。そして、株式の売買で1億円以上の利益を得たとしても、やはり税率は15%なのです。

 

住民税の税率においても、ビットコインの利益が10%であるのに対して、株式の売却益は5%と定められていますから、所得税・住民税のいずれにおいても株式投資のほうが恵まれています。

 

株式が有利な理由は、税率面だけではありません。「損失を繰り越せる」「NISAなどの非課税制度がある」という2点もポイントです。

 

損失の繰越しについては、青色申告で事業所得の赤字が出た場合と似たしくみとなっています。株の売買で損をした場合、その損失を確定申告すれば、翌年以後最長3年間繰り越せるというもので、この期間中に株の売却益が出れば、合算することができます。

 

つぎに、NISAなどの非課税制度について。こちらは、株式の売却益を非課税にできるという嬉しい制度になっています。もちろん、非課税にできる限度額はありますが、一般的な規模の投資額であれば、全額非課税にすることも難しくはありません。

 

しかし、ビットコインの場合は、株式のような損失の繰越しや非課税制度は存在しません。否応なしに総合課税所得として、所得税・住民税合わせて最高55%もの税金を払わなくてはいけないということです。

 

損失の繰越しができないということは、たとえば令和元年分で300万円損をして、令和2年分で300万円の利益が出たような場合、令和元年分の損失は一切考慮されず令和2年分の300万円に対してそのまま税金がかかるということですから、厳しい話です。この点は仮想通貨投資のリスクを考えるうえでも、覚えておいたほうがいいでしょう。

 

しかも、雑所得は事業所得と違って、他の所得との損益通算も認められていません。ビットコインによる損を、その年の給与や事業の所得と合算できないので、救いがありません。

 

一時期、ビットコインブームにより「億りびと」と呼ばれる億単位の利益を得た人が話題になったことがありました。億単位ともなると、確実に最高税率になってしまいますから、半分以上は税金でもっていかれるということになります。

 

ビットコインで利益を上げた人に対して、税務調査が入った事例もあるようですが、税務調査が入るということは、それだけ多額の税金の申告漏れが見込まれるからに他なりません。

 

こういった点をあわせて考えると、「税制は不利でも、自分はビットコインのほうが大儲けできる自信がある!」という人は別ですが、普通の人には株式投資をおすすめします。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2020年12月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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