「2/1~2/7のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・米ドル/円は先週、半年以上続いた90日MAを上放れ。テクニカルには、米ドル高・円安トライが続く可能性が高まった。
・ただ気になるのは株価の動向。経験的に株安が本格化すると米ドル/円は下落する可能性が高かった。3年前の「暗号資産暴落→株安本格化」ケースとの類似も注目。
今後「米ドル高・円安」が一段と進む可能性も
先週の米ドル/円は、104円を超えると一段高に向かい、一時105円に迫る動きとなりました(図表1参照)。ところでこの動きは、テクニカルに見ると重要な変化の可能性があります。
米ドル/円は昨年6月以降、半年以上も90日MA(移動平均線)を超えられない状況が続いてきました(図表2参照)。そんな90日MAは、足元では104円半ばなので、先週の動きは、半年以上続いてきたレンジ相場を上放れした可能性があったのです。
テクニカルで見ると、半年も続いたレンジ相場の上放れは、それまで溜まったエネルギーの発散ということから、しばらく一方向へ動きやすくなるかもしれません。よって、このレンジの「上放れ」が「ダマシ」でなければ、目先は米ドル高・円安が一段と進む可能性があるのです。
レンジ相場のブレークが「米ドル高」方向となったワケ
それにしても、なぜ長く続いたレンジ相場のブレークが米ドル高方向となったのでしょうか。それは、先週拡大した株安が一因でした。
昨年3月のコロナ・ショックにより、世界的な株大暴落が一段落した後、株高トレンドのなかで緩やかな米ドル安・円高が続いてきました(図表3参照)。
株高・米ドル安という関係を前提にすると、先週はまさにその反対の株安・米ドル高になったのです。米ドルの「売られ過ぎ」反動が入りやすくなっていたといえば、より分かりやすいかもしれません。
上述のように、コロナ・ショック後の株高・米ドル安が長く続くなかで米ドル売りが拡大し、米ドルの「売られ過ぎ」懸念が拡大していました(図表4参照)。こういったことから、米ドル買い戻しに反応しやすい状況になっていたのです。
買い戻しが入りやすい状況、そのなかでテクニカルにレンジを米ドル「上放れ」したとなると、目先的に米ドル/円は上昇余地を試す展開が続く可能性が高そうです。そこで、皆さんが気になるのが、株安の動きではないでしょうか。
株安の本格化で米ドル/円が下落へ転換する可能性も!?
先週は、米国株も何度か急落する場面がありました。
そんな株安は、上述のように米ドル高・円安を後押しした可能性があったわけですが、昨年のケースを見た場合、NYダウが1割以上といった具合に大幅安となった昨年6、10月などの局面では、米ドル/円は下落となっていました(図表5参照)。
昨年の経験を参考にすると、株安が拡大、本格化する場合には、米ドル/円は上昇から下落へ転換する可能性も考えられます。株安の本格化、たとえばNYダウがこの間の高値3万1千ドルから1割以上の下落になるならば、2万8千ドル割れに向かう計算になります。
先週「無敵の株高」が急落となった理由とは…
それにしても、昨年11月の米大統領選挙の後から、ほぼ一本調子で上昇していた、いわば「無敵の株高」は、なぜ先週急落となったのでしょうか。
実は、株価急落以前に、昨年12月、約3年ぶりに高値を更新、2万ドルの大台を突破した暗号資産のビットコイン(BTC)も、「無敵の上昇相場」が急落、暴落に転じていました。一気に4万ドルを突破したのち、年明けから一転して3万ドルまで暴落となったのです。
約3年前の暴落の際、ビットコイン暴落が拡大するなかで、結果的にはそれを後追いする形で株も下落へ急転換しました。以上のように見ると、ビットコイン下落がこの先も続くかどうかは、株安の行方、そしてその米ドル/円への影響を考える上でも注目したいところです。
今後のビットコイン価格について考えるために、3年前と今回の下落の値動きを重ねてみたところ、両者のプライスパターンはとても似ていることが分かりました(図表6参照)。この先も似た動きが続くなら、BTCは一段の下落に向かうといった見通しになります。
以上をまとめると、一旦米国株安(リスクオフ)で米ドル/円は上昇に向かうものの、米国株安が拡大に向かうならば、昨年のように下落に転換する可能性もある、それこそが2月の為替予想における最大の焦点になるといえるでしょう。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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