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ECB政策理事会:市場予想通り緩和姿勢を維持するも、声明文は正常化の兆しを示唆
欧州中央銀行(ECB)は2021年1月21日に政策理事会の決定内容を発表し、市場予想通り各金融政策の現状維持を決めました。主な具体的政策として、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を1兆8500億ユーロ(約233兆円)で維持し、少なくとも22年3月まで継続すること、中銀預金金利はマイナス0.5%で据え置き、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)を通じて銀行に「十分な」流動性供給を続けると表明しました。
ただし、声明文にPEPPについて、良好な金融環境が維持されれば、枠を使い切る必要はないとの文言を盛り込みました。PEPPを拡大する可能性があると同時に、使い切らない場合があることを示唆しました。
どこに注目すべきか:ECB、PEPP、良好な金融環境、ワクチン
ECBは昨年12月に金融緩和政策を拡大したばかりであり今回の据え置きは予想通りです。そのような中で注目されたのはPEPPの投資枠を使い切る必要がないとの文言で、将来の金融引締めへの転換を穏やかに示唆したことです。足元の景気鈍化と、将来の景気改善期待が相半ばする中、神経質な対話が求められます。
良好な金融環境が維持されれば、PEPPの投資枠を使い切る必要がない点については、昨年12月の会見でも同様のことをラガルド総裁は表明していますが、今回は声明文に盛り込まれたこともあり(他に質問することがなかったから?)会見ではこれに関する質問が最後まで続きました。その意味では消化不良な面はありますが、ラガルド総裁の回答のポイントとして次の点に注目しました。
まず、「PEPPの投資枠を使い切る必要がない」の意味は、想定より景気回復が早い、もしくはECBの表現ならば良好な金融環境が実現した場合資産購入の正常化が予定より早まると解釈されそうです。しかし、重要なのは、「等しく」資産購入を延長する可能性もあると述べていることです。PEPPに柔軟性を持たせたい考えがあるようですが、ワクチン接種が始まった今のタイミングでは、まだ先とはいえ、引締めの布石と思われてしまうのが自然と思われます。
柔軟性を持たせたい背景は足元の景気動向と将来の期待のギャップが大きいからと見ています。足元ではラガルド総裁が述べたようにユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)にあるようにサービス業を中心に回復が鈍くなっています(図表1参照)。リアルタイムデータも悪化しており(図表2参照)、21年1-3月期の成長率の下押し要因となりそうです。
一方、新型コロナウイルスのワクチン接種がユーロ圏でも始まりました。ラガルド総裁は、今後のユーロ圏経済回復の要因のひとつに、昨年12月から欧州でも開始されたワクチン接種をあげ前向きな期待を表明しています。欧州連合(EU)では現在2種類のワクチンが認可され、3種類目ももうすぐ認可の見込みとラガルド総裁は期待を寄せています。
もっとも、EUのワクチン接種の状況は遅れ気味です。想定通りにワクチン接種が広がりPEPP購入を早めに正常化するか、反対にPEPP延長に追い込まれるかの予想は困難です。声明は修正されましたが、柔軟性を持たせただけと考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB、声明文の微調整』を参照)。
(2021年1月22日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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