どのような場合に、財産分与が財産の隠匿とされるのか
もっとも、どのような場合に、離婚の財産分与が財産の隠匿となるのか、過大な財産分与となるのか、という点については未だはっきりした基準はなく、また、公開されている裁判例も少ないため見極めが難しいです。
たとえば、東京地裁平成18年7月14日判決のケースは、離婚後約1年後に夫が破産の申立をしたが、離婚の際には既に夫が多額の負債を負っていたというケースで、離婚時の財産分与として夫が妻に約8000万円の不動産と、現金5000万円を譲渡したことに対して、裁判所は8000万円の不動産については財産分与としては過大だとして、譲渡を取り消しました。
このケースは、夫が石油類の販売、石油製品の製造をするグループ会社の社長で、相当の資産家であったためにかなりスケールの大きい話になっていますので、いわゆる一般のサラリーマン家庭の場合にはあまり参考にならないのですが、総財産の2分の1を超える財産分与については、課題と評価されるリスクはあるということは示唆していると思います。
離婚の財産分与というのは、現在は実務上「2分の1ルール」というのが定着していますので、総財産の2分の1までの分与は問題なく認められます。
したがって、2分の1を超える財産分与をした場合には、2分の1を超える合理的理由、たとえば、財産を分与する側に離婚原因があったとか、分与される側に扶養的な財産分与を認めるべき事情があったという理由がないと、「過大な財産分与」と評価されるリスクが出てくるのではないかと思います。
※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。
北村 亮典
こすぎ法律事務所弁護士
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