相手が嘘をついているか否かを見抜くのはとても難しいですが、同様に、自分が嘘をついていないと相手に信じてもらうのも、とても難しいといえます。しかし、この相互理解を進められないと、ビジネスにおいても人間関係においても、支障が起こりかねません。これらの課題解決のヒントとなるのが「情報の非対称性」への理解です。どういうことでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が、身近な例から平易に解説します。

「中古車求む、予算100万円、売りたい人一報を」

では次に、中古車を買う場合の「情報の非対称性」について考えてみましょう。中古車の品質は、なかなか素人にはわかりづらいものですが、信頼できる中古車ディーラーで買えば問題ありませんね。前述のブランド品等と同様の理屈です。

 

でも、チョッと頭の体操をしてみましょう。中古車ディーラーがない国で、予算100万円でいい中古車を買いたいと思ったら、どうすればいいでしょうか?

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「中古車アドバイザー」といった人を雇う手はありますが、それも完璧ではありません。その人が本当に中古車の価値を判断する能力があるかわかりませんし、悪い売り手とグルになって粗悪品を高く売りつけて来るかもしれませんから。

 

ひとつのアイデアは、「100万円で中古車を買いたい。売りたい人はご連絡下さい」と宣伝することです。そうすると、101万円以上の価値のある中古車を持っている人は売りに来ません。

 

したがって、売りに来た人の中古車の価値は「0円~100万円まで」ということになります。

 

自分で中古車の価値を判断するのが難しい場合、どれかひとつを選んだ場合の「期待値」は50万円ということになります。運がいいときも悪いときもあるでしょうが、何回も同じことを繰り返すと平均が50万円になる、というわけですね。

 

平均50万円なのに、毎回100万円を払っていては大損ですので、これでは目的を達することができません。

 

そこで知恵を使いましょう。まず最初に「99万円で中古車を買いたい」と宣伝します。そして次に「予算が増えたので、100万円で中古車を買いたい」と宣伝するのです。

 

最初に売りに来た人の車は、99万円以下の価値しかありませんが、後から売りに来た人の車は100万円の価値がありますね。したがって、それを買えばいいのです。

 

売り手は、自分が乗り回している中古車の性能をよく知っていますので、「99万円なら売りたくないけれども、100万円なら売ってもいい」と売り手自身が考えている車なら、買い手が自分で評価するよりはるかにいいものが買える可能性が高いはずです。

 

今回は以上です。なお、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

 

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