
株式投資の「連れ高」とは、ある銘柄の株価上昇に伴い、それにつられて同じ業種や関連する銘柄の株価も上がることをいいます。「これから連れ高が起きるだろう」「連れ高が起きている」と考え、それを投資のチャンスと捉える人もいますが、そこには落とし穴がひそんでいます。今回は、その理由と、連れ高銘柄に投資する際の注意点を解説していきます。※本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する、株式会社ソーシャルインベストメントでトレーダーとして活躍する川合一啓氏が、個人投資家が株式市場で勝ち続けていくための極意について説明していきます。
連れ高が起きるメカニズムは?
株式において、なぜ連れ高という現象が起きるのかを説明しましょう。とはいっても、株価変動の因果関係を明確にするのは不可能なことであるともいえますので、「そう考えられる」程度に理解ください。
まず、ある会社Aの株価が上昇します。その会社の商品の需要が高まる社会変化があったとか、その業界の追い風となる政治判断があったとか、業績が上方修正されたとか、その理由もまたそれぞれでしょうが、とにかく上がったとします。
するとそれを受けた投資家たちが、「それならば、同業のB社やC社にも同じことが起きるのではないか」「それならば、関連するあのV業界にもよい影響がありそう」と推測します。
そして、誰かがB・C社やX業界の株を買ってそれらが値上がりすると、「やっぱりだ」「乗り遅れるな」と他の投資家も次々にB社やC社、X業界の株を買いだします。
このように、「期待→値上がり→期待→値上がり……」といったサイクルで次々に株が買われ、連れ高という現象が起きてくると考えられるのです。
ちなみにこれは、いわゆる「バブル」が起きる時にも当てはまるメカニズムだといえます。実際に上がっている株を見ると、やはり人は心を動かされてしまうのでしょう。
その会社の株価は妥当なのか?
しかし、そう考えると連れ高は、「ただムードが作られているだけ」といえるのかもしれません。そして、連れ高に乗って簡単に投資をしてしまうことには、大きな落とし穴がひそんでいるかもしれないのです。
世界一の投資家とも称されるウォーレン・バフェット氏は、「潮が引いた時に初めて、誰が裸で泳いでいたかがわかる」と語ったそうです。
連れ高が過熱すると、潮が満ちて水位が上がっている状態になります。すると、裸で泳いでいても気づかれず、恥ずかしい思いはしなくてすみます。しかし、いずれ潮が引いた時……、ちゃんと水着を着てそれに備えていた人だけが、泳ぎを続行することができるのです。
つまり、「連れ高が起きそうだ」「連れ高が起きている」というどちらの局面で投資に参加するとしても、その銘柄の現在株価は高すぎないか、を常に気にしておく必要があるのです。そうでなければ、連れ高がおさまり逆に株価の急落に見舞われる可能性だってあるからです。
株式投資では、規則性の読める海の潮の満ち引きと違い、唐突で急激な変化が訪れることがあります。そして、そのとき大きな金額をそこに投資していたら……、結果は惨憺たるものになってしまいます。
「連れ高が起きそう」な状況でも、「連れ高が起きている」状況でも、常に投資対象銘柄の価値(妥当な株価)は考えておくべきなのです。
