入院中に大腿骨を骨折した姑。手術は成功した一方で、介護の負担が減ることはなかった。息子夫婦の協力によってつかの間の休息をとることができたものの、癇に障るお見舞いや姑の理解できない言動に今後への不安が募っていく。 ※幻冬舎ゴールドライフオンラインの人気エッセイ『嫁姑奮戦記』を連載でお届けします。

「大変ですね。また徹夜かな」

時折、夜勤の看護婦さんが病室に急ぎ、帰りに足を止めて、「お薬飲んだのに、今日もまた眠らないの」と声をかけて行かれる。

 

「八時頃から三時間ほどは寝てくれたんですけど」と言うと、「大変ですね。また徹夜かな」と気の毒そうに言われる。

 

しばらく通天閣のイルミネーション等を見ていたが、もう帰るわと言うので病室に連れて帰る。姑が鼾をかき始めた頃には夜も白々と明けかけていた。

 

何かある都度、 姑は夜明けと共に眠り、私は一人トランプをするのだ。 翌日は明日退院ということで、内科、精神科の診察がある。胃のほうはまだ治っていないしピロリ菌が住みついているので、薬の服用は当分続け、時期をみて抗生物質を投与することも考えているということだった。

 

精神科のほうは帰宅しても不眠が続くようであればとお薬をくださる。整形外科で は先にレントゲンを撮って順調にいっていると診断をいただいているので、その日の診察はなかった。 家で使用するシャワーベンチ、手押し車が来たので家に配達してもらう。 家のほうは、舅の時夫が付けた手すりがあちこちそのままにしてあったし、必要と思われる分は新たに付けてくれ、まずは万全のようだ。

 

昼頃姉が来てくれる。持って来てくれたおにぎりを二人で食べる。姉たちにも世話になったが、これが病院での最後の昼食となる。

 

娘が四時頃交代に来てくれる。最後の夜くらいは寝てくれたらよいのだが。

 

家に帰ると礼文島に居る息子から電話がある。姑が明日退院することを告げると、良かったねと言いながらも、正常に戻るかなと心配している。どうにかなるでしょう、あんたも気をつけてと、電話を切る。娘と違ってこの子はこんな時、いつも家に居ない。

次ページ六月三日、いよいよ姑退院の日である。
嫁姑奮戦記

嫁姑奮戦記

大野 公子

幻冬舎メディアコンサルティング

入院早々骨折、幻覚幻聴、物忘れ……病院を騒がせる姑と嫁のやり場のない戦い。 介護する側、される側、双方には今日に至るまでの歴史がある。 血縁だけでは語れない愛がそこにはあった。 嫁が綴った過去の日記をもとに、「…

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