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同居してくれた「後妻との間の娘」に自宅を残したい
野田さんは最初の妻との間に2人の娘に恵まれましたが、子どもたちがまだ幼い頃、妻が病死してしまいました。その後再婚し、もう1人娘に恵まれました。娘は3人とも嫁いで家を離れましたが、4年前に後妻が体調を崩したころから、後妻の娘・真由美が実家に戻って介護してくれるようになりました。その後、後妻は亡くなってしまいましたが、真由美が離婚し、孫を連れて野田姓に戻ってくれたため、野田さんは頼りにするようになりました。
野田さんは3人とも平等にしてきたと思っていましたが、先妻の子である2人の娘たちからは、後妻の子ばかりかわいがってきたという発言があり、娘たちだけになると相続でもめるのではないかと不安に思いはじめました。
【財産と家族の状況】
遺言作成者:父 野田博さん 80代
推定相続人:後妻との子…長女 真由美 40代
先妻との子…長女 50代、二女 50代
遺言作成の理由:面倒を見てくれた後妻の子に少し多めに財産を残してあげたい
【遺言がないと困ること】
★先妻の子を含め等分に相続権が発生してしまう
★相続させる財産を特定しておかないと、後妻の子に自宅を確実に残せない可能性がある
★遺産分割協議が必要となり、感情的な対立を招きかねない
野田さんの財産は自宅と隣接するアパート、預貯金です。3人の娘に財産を等分に残したい気持ちはありますが、同居して妻亡き後も面倒を看てくれた真由美に自宅を相続させ、祭祀継承をしてもらいたいと思っています。そうなると、残るはアパート1棟しかないため、先妻の子2人にはそれを2分の1ずつ相続させるようにすれば、遺留分に抵触することはありません。自宅よりも少なくなりますが、それで遜色はないと考えました。
計算してもらうと、小規模宅地等の特例を生かすと相続税はかからないため、預貯金も家を継承する真由美に相続させるようにしました。
相続実務士からアドバイス
●相続させる財産を明確にしておくことで、後妻の子に確実に自宅を残すことができる
●先妻の子には遺留分に配慮した財産を指定することで、遺留分侵害額請求を未然に防ぐ
●当人同士の遺産分割協議では、感情的な対立を生んでしまうことが多い点に注意
作成した遺言の内容〈遺言者 野田さん〉
遺言者 野田博は下記のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、遺言者の長女真由美に相続させる。
【土地】
所在 〇〇区〇〇一丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇㎡
【建物】
所在 〇〇区〇〇一丁目
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 〇〇㎡
2階 〇〇㎡
遺言者は、遺言者の有する下記不動産を遺言者と前妻〇〇との間の長女〇〇及び同二女〇〇に等分の割合で相続させる。
【土地】
所在 〇〇区〇〇一丁目
地番 〇〇番〇〇地目
地目 宅地
地積 〇〇㎡
【建物】
所在 〇〇区〇〇一丁目
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 共同住宅
構造 軽量鉄骨造スレート葺2階建
床面積 1階 〇〇㎡
2階 〇〇㎡
第2条 遺言者は、遺言者の有する現金・預貯金等の金融資産から遺言者の未払い債務、葬儀費用等を控除した残余の金融資産を、長女真由美に相続させる。
第3条 遺言者は、遺言者の有する第1条から第3条までに記載した財産以外の動産等の財産全部を、長女真由美に相続させる。
第4条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、長女真由美を指定する。
第5条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長女真由美を指定する。
1 遺言執行者は、不動産の名義変更、預貯金等金融資産の解約、払戻し等、本遺言を実現するために必要な一切の権限を有する。
付言事項
妻亡き後、長女真由美は献身的に面倒を看てくれたことに感謝し、自宅や祭祀継承は真由美に託すことにしました。〇〇と〇〇は状況を理解しているはずで、アパートを等分に相続することで納得してもらいたい。私亡き後は3人で協力して姪に至るまで面倒を見てもらい、心から感謝している
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士