相続税は、遺族の結束によって節税が可能な税金です。しかし、いざ相続となったときにそれぞれの勝手な思惑がぶつかったり、外野が口を挟んだり・・・と、揉め事の原因は尽きません。*本記事は廣田龍介税理士の著作『相続財産を3代先まで残す方法』から一部を抜粋、再編集したものです。

家族間で「過去・現在・未来」について話し合う

遺言書の目的は相続人同士のトラブルを防ぐことが第一ではあるものの、相続人のその後の人生を考えるなら、それぞれの希望に近い分割方法を提示したほうが、皆が満足する相続に近づけることができます。その点を踏まえると、私は遺言書を書くこと、また遺言書の内容を家族に秘密にするのではなく、オープンにすることがあってもよいと思っています。

 

しかし、現在は家族会議のような、家族間での話し合いを行っている家庭が少なくなっているでしょうから、実際にどのようなことを話し、どのようなことを聞けばよいか、ここで順序とともにお伝えしておきます。

 

①自分の歴史を話す(過去)

資産の明細を公開する前に、自分がどのような人生を歩んできたか、どのように資産を築いてきたか、また先祖からどのように資産を受け継いできたか、資産についてどのように思っているかを、あらためて子どもに伝えます。

 

子ども側からすると何度も聞いている話かもしれず、いまさらと思う部分もあるかもしれません。しかしあらためて子細に話すことで、親が当たり前だと思っていたこと、逆に子どもが思い違いをしていたことなど、細かな発見が相互に出てくるものです。

 

今に至るまでの過去のプロセスがわかれば、相続人にも引き継ぐ責任感や感謝の気持ちが生まれてきます。

 

②相続人の現在の状況を聞く(現在)

次に相続人である子どもたちの家庭の状況を聞きます。最近は親と同居していない場合も多く、自分の子どもとはいえ表面からでは家庭の内情はわからないことが多々あります。

 

特に聞いておくべきは経済事情で、仕事の状態や住宅ローンの残額、孫の進学状況などは押さえてください。相続人として、財産を多くもらいたいというのは経済事情に起因するところが多いでしょうから、ここをケアすることでもめる危険性は減り、相続人も喜んでくれるはずです。

 

また、相続人同士がお互いの経済事情を共有できれば、実際に遺言書を見た時に、不満が噴出することを多少なりとも予防できますし、最終的な遺産分割の理由について、他の子どもにわかってもらうための第一段階ともいえます。いわば、根回しのようなものだと考えてください。ただし、家計のことはデリケートなことでもありますので、皆の前では話せないという人もいるかと思います。そういう場合は、後に1対1で話をする機会を持つといいでしょう。

 

中には、話すのを億劫がったり、恥ずかしがったりする相続人も出てくるとは思いますが、家計が大変な子どもを援助してやりたい、世話になった子どもに財産を多く分与したいという親心が前提にあることがわかれば、きっと少しずつ話してくれるはずです。

 

③将来について話し合う(未来)

相続発生後、どのように暮らすのかを話し合います。具体的には「どこに住むか」「誰と住むか」「生活資金はどうするか」です。これは、遺産分割を決める上で骨子となる、最も重要な部分です。この話を進めていく中で、実際に講じるべき節税対策や納税資金対策が見えてきます。

 

すぐには結論が出ないとは思いますが、少なくとも現時点での状況を踏まえた上で、親と子どものお互いの考えを確認するだけでも大きな意味があります。焦らずじっくりと進めるようにします。

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本記事は、2013年8月2日刊行の書籍『相続財産を3代先まで残す方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続財産を3代先まで残す方法

相続財産を3代先まで残す方法

廣田 龍介

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化による老々相続、各々の権利主張、そして重い税負担…。 現代の相続には様々な問題が横たわり、その中で、骨肉の争いで泥沼にハマっていく一族もあれば、全員で一致団結して知恵を出し合い、先祖代々の資産を守っていく…

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