社長の「滞納」は、債務として遺族が負担する羽目に…
税金の滞納は一種の負債と考えます。会社が滞納している場合には相続と直接関係しませんが、社長本人が滞納している時には相続の債務として扱われます。たとえば土地を売った売却益に対する所得税を滞納しているケースや、こっそり購入したマンションの不動産取得税を支払っていないケースなど、社長個人が滞納してしまう事例は時々見受けます。そんなことが起きてしまう理由の一つは、税金の申告や納税通知が後から届くためです。
「土地の売却代金で借金を返してしまうと、納税資金が残らなかった」「マンション購入時には手元資金に余裕があったが、不動産取得税の通知が来た時にはもうお金がない」などという事態が発生するのです。
特に不動産取得税の納税通知は、物件取得から6か月ほどで発行されるため、その間に懐事情が変わってしまうことはそれほど珍しくありません。また、事業所得は毎年同じなので親族も把握しやすいのですが、不動産の譲渡所得については売却した社長が隠していると知る手立てがありません。
社長本人は「家族に心配をかけたくない」という思いや「家族には隠している不動産購入だから」などの理由で滞納を秘密にしがちです。しかし、事故や急性疾患などで亡くなってしまった場合、家族は何も知らされないまま、いきなり相続時に債務を背負うことになってしまいます。税金の滞納は、財産を処分してでもそれほど長くない期限内に必ず支払いましょう。また、相続放棄をしない限り相続人が分担して負担することになります。
税務署が相続人に対して税金の滞納があることを連絡してくると、相続人は納税資金で手当てしたり、金額によっては相続放棄を検討したりする必要があります。滞納がある時にはなるべく早くに対応できるよう、遺言書に書き記すのがよいでしょう。また、弁護士などと「死後事務委任契約」を結び、滞納している税金の処理を委任しておけば、他の相続財産を原資に対処してもらうことができます。
「死後事務委任契約」は亡くなった後の法律的な諸々の手続きや葬儀の手配、事務手続きなどを専門家に依頼する契約です。頼める事柄の範囲が広いため、隠しごとがある社長にとっては大変役立ちます。