本記事は株式会社財産ドック著『税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再構成したものです。最新の法令・税制等には対応していない場合がございますので、予めご了承ください。

「世田谷じゃなくて川崎はどうですか」老爺の返答は?

そこで行き着いたのが、川崎に賃貸併用で二世帯住宅を建てるという提案です。

 

 

同じく世田谷で実家の近くに持ち家を持っていた息子夫婦にもその家に越してきてもらうことを考えました。その理由は川崎になったとはいえ、今度は借地ではなく土地そのものを持つことになりますから、その土地を相続するときのことを考えてのことです。

 

二世帯住宅というのは、以前は小規模宅地等の特例では建物の内部でつながっていなければならず適用が厳しかったのですが、平成26年の改正によって内部で行き来できなくても同居として認められるようになりました。

 

つまり、この二世帯住宅に長男夫婦が一緒に住んで長男が相続することになれば小規模宅地等の特例は難なく適用できることになります。川崎の土地は70坪で、当時の路線価では6000万円程度でしたが、二世帯住宅で一緒に住めばさらにそこから80%差し引かれるので、せいぜい1200万円の評価額ということになります。ここまで下がれば建物を含めても相続税はほとんどかからない算段です。

 

長男は今の持ち家を売却することになりますが、売却で得たお金を納税資金にも今後の生活費にもできます。さらに二世帯住宅を建てれば新築に住めるわけですし、自身や中学生のお子さんの希望などを相談することもできますから悪くはない話です。

 

そして、長男に二世帯住宅を残すということは、長女には何か別のものを用意しなければなりません。

 

そこは、川崎に建物を購入することで余剰金が出ているので、その現預金から用意することにしました。世田谷区では余剰など出る余地もなかったと思いますので、川崎に移す意味はここにもありました。

 

それから、Dさんの今後の収入がないということも解決しなければならなかったので、賃貸併用住宅にしました。賃貸併用住宅とは、同じ建物の中で自分の居住地と賃貸部分とを設けた建物です。これなら家賃収入によって生計や今後の資金繰りを考えることができるのです。

 

この提案について一通りご説明すると、Dさんはそれが子どもに迷惑をかけないことになるならと納得してくれたのでした。

 

川崎に引っ越すことにはなりますが、それによって遺産分割の心配がなくなり、納税資金も問題なく、相続税も節税となるプランが出来上がりました。今所有している土地に固執していたら、これほどバランスの取れた対策にはならなかったはずです。

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