「赤ん坊とモニター越しにコミュニケーション」の衝撃結果

Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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身体感覚が認識世界で意識されることはない

五感による知覚の大切さ

 

実際、「常識の罠」から抜け出すことが、アート思考を実践する上では欠かせません。アーティストが見る世界は、一般の人が認識する世界と異なります。資質的に他人と異なっている、そもそも個性的だといった違いもありますが、それだけでなくアーティストは普段からプロとして訓練を行い外界の認識に不断の変更を加えているのです。

 

アーティストのような眼を得るためには、何をすればいいのでしょうか?

 

それは視覚以外の知覚や認識に改めて意識を向けることです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

他の身体器官である触覚、味覚、聴覚なども含めて身体全体で知覚するということに気を配ること。つまり外界と直接向き合うということです。外界との接触により、情報を直接的に得ていくのです。

 

生物が進化してきた過程を見ると、人間のような眼(視覚)はすべての生物に存在するものではないことがわかります。しかしながら、身体がない生物というのは存在しないわけですから、身体感覚のほうが、原始的で根源的なのです。

 

だからかもしれませんが、身体感覚が認識世界で意識されることは稀で、ほとんど無自覚でしょう。例えば、歩き疲れなければ、足とその接地面である地面を強く意識しないでしょうし、うまく泳げる人なら、身体と水との関係を自覚することは難しいでしょう。このように脳内の認識にのぼってこない身体感覚ですが、現実との対応関係という点では、視覚世界よりも直接的で確実な面があります。

 

意識されない知覚だからといって、必ずしも使っていないわけでも感じていないわけでもないのです。

 

こんな興味深い実験結果があります。

 

赤ん坊とモニター越しにコミュニケーションをしても、赤ん坊は自分自身の経験として知覚しないというものです。つまり、人が実際に、赤ん坊を抱いてあげたり、顔を見せたり、声をかけたりすることで、赤ん坊にはじめて自らの経験として蓄積されるというのです。

 

この実験からわかるのは、五感による知覚がいかに大切かという問題です。視覚世界は、空想上のイメージや概念などを構築し、他者と交換するという意味では機能しますが、必ずしも、視覚機能だけで世界をすべて把握できるわけではないのです。

東京藝術大学大学美術館 館長、教授 練馬区立美術館 館長

1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、作家兼アートライターとして活動。

1991年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社、国吉康雄美術館の主任研究員を兼務しながら、のちに「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となる。

開館時の2004年より地中美術館館長/公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務する。2006年に財団を退職。2007年、金沢21世紀美術館館長に就任。10年間務めたのち退職し、現職。

著者紹介

連載ビジネスエリートに欠かせない「現代アート」という教養

アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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