コロナ禍、世間の風向きは「賃貸生活者」の味方に
コロナ禍の影響で多くの企業が営業不振に陥っているいま、経営者であれサラリーマンであれ、多くの労働者が減収となり、生活費もひっ迫しています。毎日の食費やライフラインの経費を節約し、それでも足りない場合は、生活費のなかでも大きなウェイトを占める「家賃支出」の削減を考えるようになります。
ネットで少し検索すれば、家賃延納・減額交渉を指南するサイトがずらりと並びますし、政府の支援策として閣議決定された「家賃支援給付金」の情報もすぐ見つかります。コロナ禍にあっては、家賃の延納・減額は致し方なく、世はまさに、賃貸生活者を支援する風潮となっていたのです。
この状況で困惑するのは大家さん、すなわち賃貸経営で生計を立てている投資家です。投資家のほとんどが融資を受けて賃貸運営しており、月々のローン支払いがあるという点では、入居者の家賃と同様です。しかしそんな事情はよそに、ネット上では「家賃延納・減額要請に向き合わないオーナーは薄情者」といった言葉があふれています。
しかしながら、問題があるのは約束した賃料を払えない入居者の方ですから、「家賃が払えなければ退去してもらうしかない」と強気で臨む投資家がいてもおかしくありません。
ある一棟マンションのオーナーの例です。2020年の1月まで満室経営で順風満帆でした。しかし2月末から1室の家賃滞納が始まり、翌月には2室が滞納、3月末にはそのうちの1室から解約届が出ました。
この入居者は個人事業主で、20年以上入居しており、これまで家賃の支払いが滞ったことは一度もありませんでした。解約の理由は「取引先の倒産」。この取引先とは業務取引のほか、個人的に出資もしており、合計数千万円の負債を抱えてしまったのです。オーナーから「数ヵ月なら延納でも構わない」と提案したのですが、事業を辞めて実家へ帰るとのことでした。
この部屋の家賃はこれまで月額30万円で、室内は20年もの年季が入った状態なので、水回り配管などを含めたフルリフォームが必要です。リフォーム経費の700万円を3年で回収するには、これまでの家賃に20万円の上乗せが必要です。
「この景況下で、30万円だった部屋を50万円に値上げして入居する人がいるのだろうか?」という不安もありましたが、入居者募集チラシに「駅徒歩3分」「フルリフォーム」「事務所利用可・法人登記可」などのコピーを載せたところ、テレワークが定着して事務所規模を縮小するというIT系企業から早々に申し込みが入り、リフォーム工事完了前に契約となりました。
先行き不透明だが、さまざまな局面に投資チャンスも
不動産市場へのコロナ禍の影響は、まだ見通すことはできません。売買に関していえば、大手不動産業者も含めてIT化への取り組みが遅れているため、緊急事態宣言解除後しばらく経ってからも店舗閉鎖、または電話受付のみの対応でした。
現在は取引件数も少なく市場は停滞気味であり、多くの投資家は様子見をしています。相場も高止まり状態を継続したままですが、不動産業者は、今後は不動産価格の大きな変動があると見ています。その変動が上昇なのか下降なのか未知数ですが、新たな局面の広がりに、さらなる投資チャンスが見えてくると思われます。
ライフプランnavi
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