3月のコロナ・ショック以降、緩やかな下落トレンドが続いている米ドル/円。本記事では、今回は米ドル/円を中心に1月の為替予想について考えてみたいと思います。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

「1/5~1/11のFX投資戦略」のポイント

[ポイント]​

・1月の米ドル/円は大きく動く傾向があるため、過去半年以上も続いてきた2円レンジ(足元では102.6~104.7円)での緩やかな下落トレンドが変わる可能性も。

・米ドル/円が大きく動き出す場合、「コロナ」後の米ドル売り「成功体験」からも、まずは米ドル売りトライの機運が強いと見られる。ただ米ドル「売られ過ぎ」懸念も強まっている点については要注意。

 

2021年は米ドル売りトライの機運が強い?(画像はイメージです/PIXTA)
2021年は米ドル売りトライの機運が強い?(画像はイメージです/PIXTA)

緩やかな「米ドル/円下落トレンド」は変化するのか

米ドル/円は、昨年3月の「コロナ・ショック」が一段落した後は、緩やかな下落トレンドが続いてきました(図表1参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表1]米ドル/円と90日MA(2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

そしてその下落トレンドは、90日MA(移動平均線)が上限、そしてそれを2%下回った水準が下限といった約2円のレンジが下方シフトするものでした(図表2参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表2]米ドル/円の90日MAからのかい離率 (2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

この2円レンジは、足元では102.6~104.7円程度。従って1月の米ドル/円は、引き続きこのレンジ内の推移にとどまるか、それともいよいよこのレンジをブレークするかが、最初の焦点になるでしょう。

「1月の米ドル/円」は値幅が拡大する可能性大!?

そしてレンジ・ブレークについてですが、可能性は十分あるといえます。というのも、1月の米ドル/円は値幅が拡大する傾向があるからです。昨年こそ、1月の米ドル/円値幅は2円台にとどまりましたが、一昨年までは4年連続で5円以上の大幅な値幅となりました(図表3参照)。

 

出所:マネックストレーダーFXをもとに作成
[図表3]過去5年の米ドル/円1月足・年足 出所:マネックストレーダーFXをもとに作成

 

新しい年が始まったばかりの1月は、米ドル/円の場合でも大きく動いて値幅が拡大する傾向があるようです。そうであれば、すでに半年以上も続いてきた2円レンジ、足元なら102.6~104.7円というレンジを、この1月相場でブレークする可能性には注目すべきでしょう

 

もしレンジをブレークするならその方向は米ドル安か、それとも米ドル高となるのでしょうか。1月の米ドル/円は過去4年連続で陰線(米ドル安)となりました(図表3参照)。ここ数年の1月の米ドル/円は、大きく動きやすく、そして米ドル安・円高気味で推移する傾向が続いてきたのです。

 

ちなみに、相場の世界には「1月効果(January effect)」という言葉があります。1月の相場の動きは、その年の動きを示すことになりやすいといった意味です。実際、上述のように1月の米ドル/円は昨年まで4年連続で陰線となりましたが、じつは年足(その年の終値と前年末終値の比較)は昨年まで5年連続の陰線でした。要するに、過去4年連続で、1月の米ドル安・円高は、その年の米ドル安・円高を結果的に先取りしたものだったわけです。

過去4年間の米ドル/円は「1月効果」通りだったが…

過去4年間の米ドル/円は、「1月効果」通りに、1月相場がその年の流れを決めたようになっていたわけです。では今年も、1月は米ドル安・円高方向にレンジをブレークし、それは結果的に今年一年の米ドル安・円高の流れを決めるものとなるのでしょうか。

 

クリスマス休暇明けで、実質的に新年相場の前哨戦となった先週、とくにこれといった米ドル売り材料が無かったにもかかわらず、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルなどは軒並み年初来の米ドル安値更新となっています。

 

昨年は「コロナ・ショック」一段落後米ドル全面安となりました。そして11月の米大統領選挙後も、円以外の主要通貨に対して米ドル安再燃が目立ちました。こういった「米ドル売りの成功体験」をもとに、新年相場に対してもまずは米ドル売りトライの機運が高まっている感じはあります。

 

ただ少し気になるのは、米ドルの「売られ過ぎ」懸念です。CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルのポジションをもとに試算)は、売り越しが20万枚程度に達しました(図表4参照)。経験的には、米ドルの「売られ過ぎ」懸念が強くなっていることを示しています。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表4]CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

まとめると、1月の米ドル/円は大きく動く傾向があるため、過去半年以上も続いてきた2円レンジでの緩やかな下落トレンドが変わる可能性があります。米ドル/円が大きく動き出す場合、コロナ・ショック後の米ドル売り「成功体験」からも、まずは米ドル売りトライの機運が強まりそうです。ただ米ドル「売られ過ぎ」懸念も強まっている点には要注意、といった感じではないでしょうか。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長

 

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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