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金融政策:メキシコは政策金利を据え置くも緩和姿勢、ノルウェーは将来の利上げ示唆
メキシコ銀行(中央銀行)は2020年12月17日、金融政策決定会合を開き、市場予想通り政策金利を4.25%で据え置きを決定しました。投票では5人の委員のうち2人は利下げ(0.25%)を主張(前回は利下げは1人)しました。ハト派(金融緩和を選好)のトーンが強まりました(図表1参照)。
ノルウェー中央銀行は17日、政策金利を市場予想通りゼロ%に据え置きました。しかし、世界経済が新型コロナウイルスの影響から回復するにつれ、利上げ時期を従来想定より早める可能性を表明しました。今回ノルウェー中銀は22年最初の数ヵ月での利上げを示唆、従来予想より約半年前倒しとなりタカ派(金融引締めを選好)寄りとなりました。
どこに注目すべきか:G10、出口戦略、低金利、住宅価格
年末が近づき多くの中央銀行が金融政策決定会合を開催しています(図表1参照)。結果を見ると政策金利の据置が並んでいます。メキシコなどは今後の利下げの可能性を残しての据え置きで、新型コロナの影響が依然懸念される中、ハト派的な姿勢が大半です。ただ、ノルウェー中銀は当面はゼロ金利を維持するも、将来の利上げ時期を前倒しするややタカ派的な姿勢となっています。
ノルウェーはG10(先進10ヵ国、スイスを含め実際は11ヵ国)の一角です。23年末までのゼロ金利政策を概ね示唆している米国など、G10各国は一様に低金利政策を維持する姿勢を示しています。
再確認となりますが、ノルウェー中銀も22年前半まではゼロ金利の維持が見込まれるなど、景気を下支えする構えです。その点は他のG10中央銀行と同じです。ただ、多くの中央銀行が低金利政策を維持する時期を示しているに過ぎないのに比べ、ノルウェー中銀はゼロ金利からの出口戦略の時期を示唆しています。前回の会合(9月)では出口戦略を数年先と表現、これを受け市場は23年頃と先の話と考えていましたが、今回半年ほど前倒しされた印象です。
では、まだ先とはいえ、利上げを視野に入れる理由を声明に求めると、低金利長期化の弊害、資産価格の上昇を懸念しています。具体的には住宅価格の上昇を指摘しています(図表2参照)。
ノルウェー中銀の金融政策レポートでは低金利で住宅価格が押し上げられた様子が推定されています。図表2の実線は住宅の実質価格(インフレの影響を除外)です。灰色の実線は所得や住宅ローン金利などで説明される推定値で、概ね実質価格と一致しています。
なお、差異の部分は住宅価格の過大評価分と指摘しています。下の黒の点線は推定当初から金利が変化しなかったと仮定した場合の住宅価格の試算値です。
実質住宅価格とこの黒の点線の試算値との差が住宅ローン金利の低下による住宅価格の押し上げ部分に相当すると、レポートは指摘しています。長引く低金利により住宅価格が押し上げられている点を指摘すると共に、仮に金利が上昇に転じれば、住宅価格の下落、消費の減少など放置しすぎた場合のリスクを指摘しています。
産油国ノルウェーは比較的財政に余裕があり、金融政策の自由度が高いという点は割り引く必要はありますが、低金利長期化の副作用は、どの国も頭の片隅に置く必要がありそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ノルウェーがややタカ派の理由』を参照)。
(2020年12月18日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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