FRB、来年は気候変動に足を踏み出すか?

一般に気候変動への対応の必要性は、総論では概ね(反対の声も根強いが)賛成ながら、各論となると問題が表面化することが多いようです。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が地球温暖化に関与すべきかについては議論さえ進んでいなかったともいえます。ただ米FRBが気候問題への関与を表明したことで、21年はこれまでと違った展開となるかも知れません。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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FRB:バイデン次期大統領の就任を睨んで気候変動への関与を

米国大統領就任が確定的となっているバイデン次期大統領は2020年12月19日、新政権の環境政策を担う内務長官やエネルギー長官へ指名したメンバーらとともに記者会見を行いました。バイデン氏は新型コロナウイルスへの対応と同じように、気候変動に国として一致団結して対応することの必要性を訴えました。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月15日に、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するための中央銀行、及び金融監督当局の国際的なネットワークである「気候変動リスク等に係わる金融当局ネットワーク(NGFS)」に正式参加したことを声明で公表しました。

どこに注目すべきか:気候変動、NGFS、自然災害、金融政策

一般に気候変動への対応の必要性は、総論では概ね(反対の声も根強いが)賛成ながら、各論となると問題が表面化することが多いようです。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が地球温暖化に関与すべきかについては議論さえ進んでいなかったともいえます。ただ米FRBが気候問題への関与を表明したことで、21年はこれまでと違った展開となるかも知れません。

 

トランプ大統領が地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」から17年に離脱表明したように、米国には気候変動への対応に消極的な面が見られます。もっとも、トランプ大統領はパリ協定では米国の負担が重くて不公平、ということを離脱の理由としてはいますが。

 

一方で、米国でも気候変動が原因と見られる災害(干ばつ、洪水、ハリケーンなどの暴風雨、山火事、吹雪など)は増加しています(図表参照)。米海洋大気局のデータによると、被害総額が10億ドル(約1000億円以上)を超える災害の件数は右肩上がりです。特に多いのがハリケーンや暴風で件数が増えてきた16年以降では6割から8割以上を占めています。また大規模な山火事もほぼ毎年発生しているなど、自然災害の拡大は印象ではなくデータでも確認でき、米国でも気候変動への関心や懸念は高まっています。

 

年次、期間:1980年~2020年(20年は10月7日時点) 出所:米国海洋大気局のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表]米国の自然災害(被害総額10億ドル以上)の件数 年次、期間:1980年~2020年(20年は10月7日時点)
出所:米国海洋大気局のデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

こうした中、FRBがNGFSのメンバーとして参加することを表明しました。NGFSは、17年に設立され気候変動リスクへの金融上の対応を中央銀行や金融監督などが議論し提言を行うもので、足元では中央銀行や金融当局などメンバーが83、オブザーバーとして世界銀行など13の国際機関で構成されています。日銀は19年に参加しています。

 

FRBのパウエル議長は今年1月にも参加の可能性を示唆していましたが、政治的な配慮からか参加を見送ってきました。しかし、バイデン氏が大統領の選挙人投票で過半数を獲得したのを待ったかのようなタイミングで参加を表明しています。またFRBのブレイナード理事は気候変動が金融安定に与える影響について調べる必要があることなどを指摘しています。

 

しかし、これはFRBに限った話ではありませんが、中央銀行が気候変動を巡る問題に関与すべきかについては、中央銀行の独立性にも影響が及ぶ恐れがあり、今後最も重要な論点になると思われます。FRBの議論はこれからなので、気候問題で先行する欧州を見ると、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁らは資産購入プログラムを活用して「価格のゆがみを正す」という名目で、環境にやさしい企業の社債購入を優先する考えを示唆しています。しかし、ECBの有力メンバーであるドイツ連銀のワイトマン総裁は、それは政治の役目であると、メディアなどで公に反対を表明しています。詳しくはご紹介できませんが、ワイトマン氏の考えにも一理あると筆者は考えています。

 

米国に話を戻せば、FRBもストレステストなどを通じて気候問題へ参入するアイデアはあるようですが、議論はこれからです。ただバイデン氏のパリ協定復帰宣言などでその動きが速まるかも知れません。気候変動は長期問題ではなさそうです。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『FRB、来年は気候変動に足を踏み出すか?』を参照)。

 

(2020年12月21日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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