大学病院の教授の権威は失墜し、もはや野心溢れる若手医師が目指す存在ではなくなったという。健康診断や当直などのアルバイトで食いつなぐフリーター医師も出現した一方で、『ドクターX』で有名になった、専門的なスキルを売りにして腕一本で高額な報酬を得るフリーランス医師は、病院にとって不可欠となった。100以上の病院を渡り歩いた現役麻酔科医が知られざる医療の現場、医師たちの本音を明かす。本連載は筒井冨美著『フリーランス女医は見た医師の稼ぎ方』(光文社新書)の一部を抜粋、再編集したものです。

コロナ禍のフリーランス医師の現状

コロナ禍で医者は余った

 

2020年、日本はコロナ禍に見舞われた。連日のマスコミ報道を見て、日本中の病院ですべての医療従事者がコロナ診療に奔走していたように感じている人も多かったと思う。しかし実際には、コロナ関連業務に対応する「多忙なひと握りの医師」と、「暇で困惑する多数の医師」に分かれていた。

 

政府の緊急事態宣言や「志村けん」ショックを受けて、病院のお得意様である高齢者を中心に病院の受診控えが進んだ。健康診断や美容などの「不要不急の診療」は休止となり、生死にかかわらない手術は延期となった。この結果、多くの病院は経営が悪化し、マンパワー調整弁でもあるフリーランス医師の需要は冷え切った。

 

「健康診断」「人間ドック」「カウンセリング」などのロースキル系ローリスク系の医師アルバイト案件は激減し、単価も下がった。あるいは高額で新規募集されるのは「発熱外来」「PCR検査センター」などのコロナ関連案件が目立った。

 

6月頃から一般外来の患者数や手術件数は増加に転じているが、12月末現在でも前年度の水準には達していない。「医師免許さえあれば誰でもできる」系のロースキル案件は件数も単価も下がったままで、このまま固定化しそうな雰囲気である。フリーランス医師の中でも問題のあった医師はコロナ禍を経て、音信不通やら事実上リタイヤに追い込まれた人材も少なくない。

 

一方、「人工透析」や「全身麻酔」など治療の必要性が高い分野で、確かなスキルやコミュニケーション能力を持つ医師の需要は依然として高い。コロナ禍で経営破綻が噂される病院は少数ではなく、病院の経営再編が行われる場合には、常勤医(正社員)と言えども医師の選別は確実に行われるだろう。その結果、年功序列の固定給から、売上連動制の変動給に変わるケースも多そうだ。

 

このコロナ禍を生き残れるのは結局のところ、医師だろうとビジネスパースンだろうと、「船が沈みかけても次の船から拾ってもらえる確かなスキルを持つ者」なのかもしれない。

 

筒井冨美

フリーランス医師

 

 

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方

フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方

筒井 冨美

光文社新書

大学病院の教授の権威は失墜し、野心溢れる若手医師が目指す存在ではなくなった。 いま、封建的で年功序列の組織に飛び込んで行っても、将来のポストの保証はない。その代わりに、医師たちは将来のキャリアに役立つ都心のブラ…

女医問題ぶった斬り!女性減点入試の真犯人

女医問題ぶった斬り!女性減点入試の真犯人

筒井 冨美

光文社新書

東京医大の入試不正事件をきっかけに明るみ出た、女性の医学部受験者への減点操作。「女性差別だ」の声の一方で、「必要悪」「長年の公然の秘密」との声も多かった。医学部人気が過熱し、女性の志願者も増える現在、なぜ「女医…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧