日本の労働法は、労働事件が発生したとき社長を守ってくれない。経営判断をするとき、「これってまずくないか?」と立ち止まる感覚が必要だという。これまで中小企業の労働事件を解決してきた弁護士は、この“社長の嗅覚“を鍛える必要があるとアドバイスする。本連載は島田直行著『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』(プレジデント社)から抜粋、編集したものです。※本連載における法的根拠などは、いずれも書籍作成当時の法令に基づいています。

人財を育てる社長、人罪をつくる社長

この「人財キャッシュフロー経営」というコンサルティングの目標は、ヒトとカネのフローを意識して事業を発展させる一枚岩の組織を作りあげることにある。組織が弱いと社長の足元が揺らいで飛躍することができない。とくに人材不足が著しい現在においては、「今いる社員で強い組織を作りあげる」ことはすべての社長の課題であろう。

 

島田直行著『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』(プレジデント社)
島田直行著『社長、辞めた社員から内容証明が届いています』(プレジデント社)

経営に熱心な社長ほど、新しい人事評価システムや賃金体系の確立に挑戦し失敗する。そして、その原因を「自社の社員のレベル」や「導入した制度の複雑性」に求めがちだ。違う。失敗の原因は、それぞれの制度がバラバラで体系立てられていないからだ。つまり、制度間のつながりがないために落ち着きが悪いのだ。

 

人財キャッシュフロー経営では、各制度間のつながりを重視している。些末な問題は省略して、採用から育成、退職に至るまでの一連の社員の動きを社長自身の手で一気通貫したものに変えていく。ここでのポイントは「社長自身の手で」ということだ。

 

人こそ事業の根幹なり

 

人事評価などを外部のコンサルティング会社に丸投げする社長がときどきいる。たいていの場合、立派だけど使えないものができあがる。あたりまえだ。社員からすれば、サイズも価値観もわからない人が洋服を製作して、「はい、これを着用して満足して」と言われたようなものだからだ。人こそ事業だ。だからこそ、社長が脳から汗が出るくらい考えないと自社オリジナルの作品はできない。

 

「ジンザイ」という言葉には、いろんな漢字が当てられる。いきいきと働く「人財」、粛々と業務をこなす「人材」、ただいるだけの「人在」、トラブルを引き起こす「人罪」など。強い組織を作るためには、社員個人の成長を促し、「人財」へとステージを上げていくことが不可欠だ。だからこその人財キャッシュフロー経営だ。

 

島田 直行
島田法律事務所 代表弁護士

 

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社長、辞めた社員から内容証明が届いています

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島田 直行

プレジデント社

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