今いる社員の10年後の年齢と人件費を見える化
人財キャッシュフロー経営
中小企業の経営の要諦は、人、設備、売掛金、買掛金及び在庫にともなうキャッシュフローをいかに握るかにある。この5つの要素についての現金の流れをコントロールできれば、自社のキャッシュは自然と増えてくる。逆に言えば、これらの管理が杜撰で売上ばかりを求めていくと、売上が伸びるほどにキャッシュが不足して経営が苦しくなってしまう。
社長は、単に「今キャッシュがいくらあるか」を知っているだけでは不十分だ。事業をすれば、キャッシュは会社からいったん出て、再び戻ってくる。社長は、「キャッシュがどのように利用されて増殖していくのか」という一連のフローを把握しておかなければならない。
そして、会社から出入りするのは、キャッシュだけではない。人材も同じだ。採用すれば会社に入る。退職すれば会社から出ていく。キャッシュと人は、同じような動きをするわけだ。そうであれば、キャッシュと人の流れを統一的に把握すれば、中小企業の組織を考える上で効率的なのではないか。そういった視点から私が体系化したものが、「人財キャッシュフロー経営」というコンサルティング手法だ。
今いる社員の10年後の年齢推移と予想人件費を見える化する
社長は、将来のキャッシュの動きについては考えているが、人の動きについてはあまり意識を向けていない。私のコンサルティングでは、今いる社員を基本にこれから10年間の年齢の推移と予想される人件費を「人財キャッシュフローシート」に書いてもらう。
シートの具体的な記入方法については、あとで詳しく説明するが、読者の方々もぜひ一度作成してみてほしい。この1枚のシートからでも「3年後に製造の責任者が退職するけれど、引継ぎ予定者がいない」「平均年齢が50歳を超える」「現在の規定では7年後にかなりの退職金の負担が出る」など、あれこれ見えてくる。コンサルティングを受けた社長からは、「人についてはあまりにも近視眼的だった。はじめて鳥瞰図を目にした」という評価をいただいている。