「東京ルール」とは、退去時の原状回復費用の負担に関わるトラブルを防止する目的で定められた「賃貸住宅紛争防止条例」を指し、東京で賃貸物件の契約を結ぶなら必ず知っておきたいルールです。(本文より)『人口減少時代を勝ち抜く 最強の賃貸経営バイブル』(幻冬舎MC)から一部を抜粋し、賃貸経営において「退去を減らすコツ」を見ていく。不動産オーナーに向けて書かれた書籍ではあるが、その視点を知ることは、借り手側にとっても役立つ知識になるであろう。

伝えるのが面倒…入居者の「声にならない不満」は多い

賃貸経営において、入居者が退去する際のダメージは大きいものがあります。いかに長期にわたって入居してもらうかがキャッシュフローの多寡を左右するので、考え得る限りの対策を講じなければなりません。例えば、2年に1度の更新料の免除です。更新のタイミングで引っ越す人はそれなりに多いため、更新料を無料、もしくは値下げするのは有効でしょう。

 

また、設備の不具合を直すというのも一案です。実は不具合を知りながらも、伝えるのが面倒で放置しているという入居者は意外といるもの。そうした声にならない不満をすくい取るために、アンケートを取り、設備の不具合を直します。

 

対策を取るタイミングとしては入居時か更新時のどちらかです。ただ最近、私の経営する会社でも管理物件が増えているため、今後は管理単体で受託する際には更新時のタイミングに絞ろうかと検討しています。

 

なお、それとは別に、自社で売却した物件の管理をする場合、自社で満室にするとともに入居時のヒアリングシートで不具合を確認しています。

 

「大家は気づいていないが、実は入居者が不満に思っていること」という例は、意外とあるものです。典型的なのは、「ゴミの分別が徹底されておらず、ゴミが常に放置されている」というケースです。

 

事例を紹介すると、埼玉県川越市にある物件では、中国・韓国・ベトナムなどさまざまな国の出身者が入居しています。ゴミ出しのルールを守ってもらうため、日本語・中国語・英語で書かれたゴミ分別の用紙をゴミ置き場に貼りだすのはもちろん、数ヵ月に1度は各戸にポスティングしていました。

 

しかし、それでもルールを守らない入居者が多く、それを嫌がって退去する人が相次ぎました。その後、週2回の頻度で巡回するなど、死に物狂いで改善を図ったところ、問題は解決しました。こうしたトラブルはすぐに解決するものではありませんが、根強く取り組んでいくことで好転するケースが多いです。あきらめずにしっかり対応することが肝心です。

 

また、退去につながりやすい例として、騒音問題も挙げられます。「隣に学生が住んでおり、深夜でも大音量でギターを弾く!」などが典型例でしょう。いずれにせよ、退去したい理由が建物や管理体制によるものであれば至急改善すべきです。例えば、夏にエアコンが故障して対応が遅れると大問題となってしまいます。しかし、ほとんどの不動産投資家が室内に対して意識が及ぶものの、共有部に対しては疎かになりがちです。

 

これは私自身にも経験があります。以前、私は練馬区にアパートを持っていたのですが、そこまで資金に余裕がなかったため、室内を中心に自分でできる限り対応をしていました。ただ、共有部の管理に対する意識が低かったため、駐車場に車が停められないほど雑草が生い茂ってしまったことがあります。それ以降は建物の中だけでなく、「外もしっかりと見なくては!」という意識に変わりました。

 

築年数があまり経っていないにもかかわらず蜘蛛の巣が張っていたり、鳥のフンの汚れがあったりする物件は珍しくありません。そこまでいかなくとも、溢れんばかりに広告チラシが押し込まれている郵便ボックスがあると、「この物件は質が低いのでは・・・」とネガティブな印象を与えてしまいます。

 

逆に、築古の物件でも掃除が行き届いていて、適切にリフォームが施されていれば好印象を抱かれます。したがって、築年数にかかわらず、室内だけでなく共有部にもメンテナンスを施すのは有利な条件で売却するために欠かせないと断言できます。逆にいうと、物件探しにおいては個別の部屋のリフォーム状況と同じくらい、共有部の管理体制がしっかりしているかを確認すべきです。

部屋の劣化はオーナー負担となる「東京ルール」

繰り返しになりますが、半年〜1年以内の早期退去は、管理もしくは建物に原因があることが大半です。前述したように、「入居者のマナーが悪い」「清掃の回数が少なく、共有部がいつも薄汚れている」などがその典型例です。

 

とはいえ、オーナー側からすれば、できるだけ出費は抑えたいもの。「月2回の清掃で十分じゃないか?」「ゴミ集積所にお金はかけたくない!」と考える人もいるでしょう。それに対して、私は「管理会社と密にコミュニケーションをとるのが大切」だと思っています。管理会社の仕事は、おおまかには「空室を埋める」「家賃を回収する」「入居者と建物を管理する」の三つに分かれます。

 

すべてに対していえるのは、管理会社がオーナーの代わりに入居者へ説明してくれたり、逆に入居者の要望をスムーズにオーナーへ報告をしてくれる、つまり円滑なコミュニケーションが取れているかがポイントなのです。

 

清掃を例に挙げると、月に2回の清掃でいいのか、4回でなければならないのかを管理会社がオーナーにしっかり説明するということです。地味な話ですが、結局のところコミュニケーションで改善できる部分が意外なほど多いものです。

 

昔であれば、入退去に伴って礼金・敷金が入ってきて原状回復は入居者が負担するのも珍しくありませんでしたが、今では原状回復に関して「東京ルール」が定められて、入居者保護の動きがあります。

 

原状回復を負担するのは入居者か? (画像はイメージです/PIXTA)
原状回復を負担するのは入居者か?
(画像はイメージです/PIXTA)

 

「東京ルール」とは、退去時の原状回復費用の負担に関わるトラブルを防止する目的で定められた「賃貸住宅紛争防止条例」を指し、東京で賃貸物件の契約を結ぶなら必ず知っておきたいルールです。長期入居による部屋の劣化はオーナー負担となり、原状回復費用におけるオーナー負担の比率が増えているという実情があります。

 

また、昔と比べると家賃相場は下落している傾向にあります。昔からずっと住んでいる入居者の家賃よりも、最近住み始めた入居者のほうが家賃は低いケースもなんら珍しくありません。

 

ただ、そうしたケースでは、昔から住んでいる入居者が退去してしまうと家賃収入が減る(利回りが下がる)とともに、東京ルールにより原状回復費用が得られなくなってしまいます。

 

ですから、長期間住んでもらっている入居者さんには、そのまま住んでもらえるよう、清掃は手を抜かずにすべきです。管理で一番コストになるのは「募集費」です。入居者に短期間で退去されると、募集をして新しい入居者を見つけなければなりません。その繰り返しが最も高いコストとなるのです。コスト面で考えても、そうした人たちに退去されるよりも清掃回数を増やしたほうが安く済むはずです。

 

とはいえ、毎月かかっているランニングコストは低いに越したことはありません。しっかりとランニングコストを見直せば経費削減が期待できます。もちろん、管理会社への委託金を減らす手段もありますが、管理状態の悪化は早期退去を招くリスクがあるので、無理に削減すべきではありません。

 

それでは、管理面で経費削減できる部分はないのかと問われると、決してそうではありません。例えば、電力会社を替えればランニングコストを減らせます。特にポンプが付いている物件は電気代が高いのですが、別会社に切り替えたことで電気代が16%削減できたケースもあります。

 

また、首都圏ではあまりない話ですが、地方の郊外に行くとプロパンガスのサービスも熱心なので、オーナーチェンジの際に新しいプロパン業者に切り替えてコストを削減したという例も珍しくありません。他には最初に出費があって、長い目で見るとコスト削減になるケースもあります。例えば共有部の電気をすべてLEDに替えた場合は、一時的にコストが発生したとしても、長期的に見ればむしろ経費削減になります。

人口減少時代を勝ち抜く 最強の賃貸経営バイブル

人口減少時代を勝ち抜く 最強の賃貸経営バイブル

菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

赤字に悩む「サラリーマン大家」必読! 年間700世帯の管理受託、驚異の入居率97%を実現! 不動産管理のスペシャリストが明かす「入居付け」の極意

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