息子、娘には頼めない…70代敏腕社長の苦悩
北陸地方で有数の技術力を持った、ある金属加工メーカーがありました。当時70代のオーナー社長から、最初の相談を受けたのが05年末のことでした。
その会社は、名前を聞けば誰でも知っている東証1部上場企業と縁が深く、長年にわたって部品を納入していました。売上の過半はその上場企業に依っており、当時年商は30億円ほどで、高い利益体質を誇っていました。
ご多分にもれず、この会社も後継者のことで悩みを抱えていました。息子さんはいたものの、諸事情により社内には入っておらず、後継には無理がありそうでした。娘さんも管理担当として社内にいましたが、力仕事を伴う事業を継がせるには忍びないという気持ちがオーナー社長にはあったようです。
当初、相談を受けて考えたのは、納入先の上場企業に買収を持ちかけるという方向性でした。オーナー社長の会社は、長年、その上場企業の下請けとして貢献してきたわけで、上場企業もその技術を評価していたからです。
実際、特定の数社との商取引が売上の大半を占めるといったケースでは、キーとなる会社に買収を持ちかけるといったことはよくあります。実態としては親会社と子会社のような関係になっているケースもあり、〝親会社〟に妥当な価格で引き取ってもらえるなら、話も早くまとまるからです。