本記事は書籍『会社を息子に継がせるな』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。刊行当時より税制・法令改正等ございますが、相続対策の成功事例として再掲します。

売上、利益とも激減…オーナー社長の最終結末は?

金属加工品の売れ行きは日本のみならず欧州などでもパタリと止まり、オーナー社長の会社でも売上、利益とも激減しました。

 

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交渉は難航しましたが、株主、会社、ファンドの三者の合意のうえでの株式の譲渡が行われました。ファンドへの返済は、MBO後に、次期社長となった甥が経営する会社の利益から返済していくというスキームです。当社ではファンドの資金調達にも援助をし、このようなケースでは通常7~8%程度の金利のところを、4%の金利で資金調達を行うことができました。

 

このMBOには、他にも学ぶべき点があります。一つは、株式の集約です。

 

甥が1割、ファンドが9割を出資して前オーナー社長から全株式を買い取ったわけですが、実は一部の株式が、某ベンチャーキャピタルに取得されていたのです。ビフォーM&Aの一つとして、事前に株式を集約しておくことが大切です。特に第三者にM&Aで株式を譲渡する際は、事前に情報が漏れるのを防ぐため、「事業承継の一環として株式を集約している」といった名目で、利害関係者などから事前に株式を集めておくことが有効なのです。

 

このケースでも、ベンチャーキャピタルが持っていた株式は、相場で事前に買い戻しを行いました。次いで、キーとなる取引先の上場企業への告知ですが、これはMBOの完全終了後に行いました。取引先や金融機関はもちろん、一般社員に対してもM&Aの情報は最後の最後まで秘密にするのが原則です。

 

晴れて甥が後継者になってからは、会社の業績は急激に回復しました。そして後継した後、11~12年かけて、会社の利益を原資として甥はファンドが有していた9割分の株式をすべて買い戻し、名実共にオーナー社長となりました。

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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