前回は、決算書上に示されているデータで「原価」の検討をする危険性について説明しました。今回は、売上を増やすことだけに囚われて、本来の目的である利益を忘れてしまうという問題点について見ていきます。

売上よりも大切なのは「利益を増やすこと

前回に引き続き、儲け上手社長が実践している、儲からない原因を突き止め高収益体質に変える「数字の読み方」を見ていきます。

 

その4 売上目標を捨てる

一般に、中小企業の経営者は売上の話が大好きです。そのため、事業に対する将来的な抱負を語る場合、「年商10億円を目指す」「今年は年商1億円だったが、来年は2億円にしたい」などと真っ先に売上の話から始める人が珍しくありません。

 

「年商○○億円」などというフレーズはわかりやすいですし、また、あえて大きな目標を掲げて自らを奮い立たせる気持ちもあるのでしょう。このような売上に対する経営者の特別なこだわりは、通常、事業の計画にも反映されることになります。すなわち、徹頭徹尾、売上を重視した計画書が作成されることになるわけです。

 

確かに、売上が多くなれば、それだけ会社の儲けも増えるように思えます。しかし、本当に「売上が上がる=儲けも増える」となるのでしょうか。売上よりも大切なのは利益では? まずは下記の図表をご覧ください。

 

【図表 商品構成】

上の表はとある会社の商品構成、売値、仕入値、粗利額、数量、売上、原価、トータルの粗利額を示したものです。これを見れば、現在、売上がトータルで1000万円、粗利が400万円あることがわかります。

 

一方、下の表は、商品Aと商品Cの販売数量を変えたものです。具体的には、商品Aは数量を1から2に増やし、商品Cは数量を2から1に減らしています。その結果、売上は1000万円と変わりありませんが、トータルの粗利額は415万円になりました。

 

つまり、15万円も利益が増えたわけです。この結果は、商品Aの方が商品Cよりも粗利額が大きいことによってもたらされたものです。売上を増やさなくても、このように販売している個々の商品について細かく分析を行い、商品の販売構成を変えるだけでも利益を増やすことができるのです。おそらく、売上よりもより大切なのは利益であることは、多くの経営者が十分に承知しているはずです。

 

しかし、売上のことばかりが頭にあると、利益に対する視点を忘れがちになります。その結果として、売上を上げる方法以外にも利益を最大化する選択肢があることを見落としてしまうのです。

売上目標の数字が「必要な理由」を分析してみる

なお、売上に対して強いこだわりをもっているような場合には、その理由を深く掘り下げて分析してみるといいかもしれません。

 

たとえば、「年商10億円をあげたい」という目標を掲げているような場合に、本当に、年商10億円を実現することが自分の求めていることなのかを、つまりは、なぜ10億円という数字をあげているのかをいま一度じっくりと考えてみるのです。

 

10億円も年商があることを他人に自慢したいだけなのか――。

個人的な理由があって10億円を実現したいのか――。

 

その理由しだいでは、何も10億円という数字にこだわらなくても、あるいは9億円でも、8億円でも構わないかもしれません。結果的には、10億円という額を目標とした合理的な根拠がないことに気づくことになるかもしれません。

本連載は、2015年11月12日刊行の書籍『「儲かる」社長がやっている30のこと』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「儲かる」社長がやっている30のこと

「儲かる」社長がやっている30のこと

小川 正人

幻冬舎メディアコンサルティング

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