銀行から融資を得るには書面交渉が有利
前回に引き続き、儲け上手社長が実践している、儲からない原因を突き止め高収益体質に変える「数字の読み方」を見ていきます。
【その9 銀行との交渉術を身につける】
金融機関対策に関しては、決算書上の工夫だけではなく、銀行と融資交渉をする際に心得ておきたいポイントもいくつかあります。
まず、原則として、銀行に対しては、具体的な数値を示して、書面で説明することが必要となります。銀行側に伝えたい事項については全て書面の形にまとめて担当者に渡すようにしましょう。
企業の側から「今回、売上の数字は○○になりましたが、それにはかくかくしかじかの理由があって・・・」などという説明を口頭で受けた後、担当者は銀行に戻りそれを稟議書の形にまとめることになります。話す中身を書面で用意しておけば、稟議書の作成作業にかかる時間と手間を大きく省けるので、担当者は助かるはずです。このようなささやかな配慮でも、融資を得るうえで有利に働く可能性があることを意識しておきましょう。
決算書で銀行側が疑問に思う点は事前に対策を打つ
銀行と交渉する際に、経営者の側から説明すべき事項としては、前期の結果(決算概況)と今期の見通し(資金繰り)があげられます。
具体的には、なぜこのような決算になったのか、決算の改善を図るために今後どのような方策を立てていくのか、その過程で資金が必要になる可能性もあるので融資をお願いすることになるかもしれない、などといったことを伝えます。
そして、損益計算書に関しては、売上、利益について以下の点を明確にします。
①売上
売上が減少していればその理由、売上回復に向けての対策。
②利益
利益金額と利益率、赤字であれば赤字の原因。
一方、貸借対照表については、主に次の①から⑤の事項について説明を行います。
①売掛金
売上債権回転期間の長さが目立つようであればその理由。
②在庫
棚卸資産回転期間の長さが目立つようであればその理由。
③有形固定資産
保有している土地等に多くの含み益があると思われる場合は、路線価図等の土地評価資料を添付する。
④その他の流動資産
前渡金、未収入金、立替金、前払金、前払費用、仮払金等について資産としての正当性を主張する(なぜ発生したのか、いつ解消されるのかなど)。
⑤実質有利子負債
有利子負債から企業が所有する現金預金を差し引いた実質有利子負債の金額を明らかにする。
このように、決算書に関して銀行側が疑問に思う点、不審に思う点を把握したうえで、あらかじめ手を打っておくことが交渉の大きなポイントとなります。
担保とみなせるような簿外資産は積極的に開示する
交渉相手の銀行に、預金口座を設けている場合には、預金の額等に関する情報についても伝えておくといいでしょう。
たとえば、5000万円の預金を預けているような場合には、仮に1億円借りたとしても、銀行側は5000万円については預金と相殺する形で債権を回収できるので、実質的には5000万円を借りているのと同じことになります(図表参照)。
そこで、1億円ではなく5000万円を借りている状況を前提として、金利を低利にしてもらうなど有利な条件を引き出すことが期待できるかもしません。また、同様に、銀行にとって担保とみなせるような“簿外資産”があれば、それに関しても伝えておくといいでしょう。
たとえば、倒産防止共済(経営セーフティネット共済)や生命保険(養老、定期)は、いざとなれば解約等することによって、借りたお金を返済するための原資とすることができます。
具体的には、倒産防止共済については加入の実績と掛金総額について、生命保険については証券のコピーと解約返戻金の額を提示するといいでしょう。借り手に預金や簿外資産があれば、債権の回収可能性が高まるので、銀行は融資により前向きになれます。したがって、それらの情報については積極的に開示するのが得策です。