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今回の地区連銀経済報告(ベージュブック)では、10月中旬以降も米国経済は大半の地域で緩やかな回復が続いたと指摘しています。ただ一部地域は停滞や回復の鈍さが指摘されるなど、最近のベージュブックのトーンに比べ、米国景気への見方をやや弱めた印象です。新型コロナの感染再拡大による、景気、特に雇用への影響が指摘されています。
米地区連銀経済報告:景気回復の維持を確認するも、一部に弱い動き
米連邦準備制度理事会(FRB)は2020年12月2日に地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表しました。経済は大半の地域で緩やかな回復が確認されました。ただ、新型コロナウイルスの感染が特に拡大している地域では減速の兆候が示されました(図表1参照)。ベージュブックの冒頭文章は、経済の拡大ペースについてほとんどの地区が「緩慢ないし緩やか」であることが示唆されていますが4地区はほぼゼロ、ないしはゼロ成長と指摘しています。
なお、今回のベージュブックは、11月20日までに12地区連銀が集めた情報を基に作成されています。
どこに注目すべきか:ベージュブック、雇用、新型コロナ、CARES
今回のベージュブックでは、10月中旬以降も米国経済は大半の地域で緩やかな回復が続いたと指摘しています。ただ一部地域は停滞や回復の鈍さが指摘されるなど、最近のベージュブックのトーンに比べ、米国景気への見方をやや弱めた印象です。新型コロナの感染再拡大による、景気、特に雇用への影響が指摘されています。
ベージュブックは米連邦公開市場委員会(FOMC、次回は12月15日と16日開催予定)の議論のベースの1つとなるものです。そこで簡単に内容を振り返ります。
まず、最初の特色として雇用市場に関連する記述、もしくは関心が高いことです。例えば、総括の中で通常であれば中央銀行にとって関心が高い物価動向はほんの数行にまとめられているのに対し、雇用市場について3倍以上の分量の記述が見られます。
ベージュブック全体では米国景気の回復を確認する内容ですが、雇用については慎重な見方となっています。その背景は新型コロナの影響が影を落としているからで、例えば感染再拡大に見舞われたニューヨーク地区連銀は雇用市場が弱いと述べています。また、ミネアポリス地区連銀のコメントにあるように、コロナで学校がオンライン授業となることで、女性の就業が妨げられているといった報告も見られます。企業も売上の伸び悩みから雇用には慎重で、ダラス連銀のように、経済活動は拡大と報告しながらも、雇用には慎重です。
なお、2日には11月の米ISM製造業景況指数が発表されました。全体の水準は57.5と高水準ですが、雇用指数については48.4と前月(53.2)を大きく下回っています(図表2参照)。
次に雇用以外の懸念として、娯楽や小売りなどの分野で破綻とローンの延滞が増える可能性が指摘されています。また、失業保険の追加給付と立ち退き猶予措置が年末で期限切れとなることも懸念しています。コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法に基づくFRBの緊急融資プログラムの一部について年末での失効、未使用資金の返還を財務省が求めたことに対しFRBとして懸念を示した格好です。
FRBは次回のFOMCではフォワードガイダンスの変更などにとどめる可能性はありますが、週末の11月雇用統計などを踏まえ、FRBがどこまで対応を強化するかに注目しています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米地区連銀経済報告、総じて回復も雇用に不安』を参照)。
(2020年12月3日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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