新興国通貨:ブラジル、景気の不透明感を財政規律が払拭

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ヘッドライン20年10月12日号『新興国通貨:ブラジルレアル、不振の理由』(関連記事参照)でブラジル通貨レアルの動向(図表2参照)において、財政政策もしくは規律の維持が重要となると述べました。ブラジルの経済成長見通しにも影響を与えそうな財政政策について、ブラジル当局は規律を重視する方針と見られ、足元のレアルにはプラス要因となった模様です。

ブラジル7-9月期GDP成長率:前期からは大幅に回復するも、市場予想は下回る

ブラジル地理統計資料院(IBGE)が2020年12月3日に発表した実質GDP(国内総生産)は前期比で7.7%と、市場予想(8.7%)を下回りました(図表1参照)。

 

なお、新型コロナウイルスの影響で過去最低となった前期(4-6月期)のマイナス9.6%からは大幅に回復しました。

 

四半期、期間:2007年7-9月期~2020年7-9月期、前期比<br />出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルGDP成長率と主な需要項目の推移四半期、期間:2007年7-9月期~2020年7-9月期、前期比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:ブラジルGDP、緊急支援金、財政規律

ヘッドライン20年10月12日号『新興国通貨:ブラジルレアル、不振の理由』(関連記事参照)でブラジル通貨レアルの動向(図表2参照)において、財政政策もしくは規律の維持が重要となると述べました。ブラジルの経済成長見通しにも影響を与えそうな財政政策について、ブラジル当局は規律を重視する方針と見られ、足元のレアルにはプラス要因となった模様です。

 

出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルレアル(対ドル)と政策金利、国債利回りの推移 日次、期間:2019年12月3日~2020年12月3日、国債は10年国債
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

まず、ブラジルのGDPの特色を見ると、構成要素であるサービス業は概ね6~7割程度であるためGDPと似た動きとなっています。7-9月期のサービス業は前期比6.3%と前期の同マイナス9.4%から回復しています。前期比で7.6%と上昇した個人消費の動きが主な要因です。

 

資源価格や世界貿易が改善傾向であることから、鉱工業セクターも7-9月期は前期比約15%と回復していますが、ブラジル経済に占める割合では(個人)消費が重要です。

 

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、個人消費を底上げしたのがコロナ対応緊急支援金(コロナバウチャー、コロナで収入を失った非正規労働者に対する月600レアル(約1万1000円)の現金給付)です。この政策が消費を下支えしたと見られる一方で、悪く言えばバラマキであり、財政コストの高さが為替市場で懸念されていました。ブラジルの債務残高対GDP比率は今年100%近い高水準(財政悪化を示唆する水準)になると見込まれています。

 

ブラジルでは経済成長を重視するボルソナロ大統領と、財政規律を訴えるゲジス経済相などとの対立が年後半見られました。ブラジル中央銀行のネト総裁も財政悪化はブラジルの信用を低下させ、そのマイナスは財政政策の恩恵を上回ると10月後半に述べ、財政規律を訴えています。

 

結局コロナバウチャーは9月に半減され、その後継続を巡って議論が続きましたが、財政規律重視が優勢で、12月1日にはボルソナロ大統領が年末に終了、その後の延長はしないと表明しました。7-9月期のGDP成長率は市場予想を下回り、コロナバウチャーが停止となれば景気回復の足かせとなることも懸念されます。

 

一方でブラジル国債利回りは低下傾向です(図表2参照)。ブラジル中銀総裁が予見したように、財政規律の維持のプラス面も大きいようです。なお、給付については、よりマイルドな制度(恐らくボルサファミリー)に引き継がれる模様です。ただ、ブラジルの経済対策の手段が限られるのも頭の痛い問題です。政策金利の引き下げ余地はほぼ無いと見られます。

 

ブラジル当局は社会活動の制限緩和を進める考えもあるようですが、コロナ感染再拡大となる恐れもあります。ブラジルでは2年後に選挙があり、財政拡大が求められる可能性も考えられます。通貨レアルにとり、財政規律の維持は当面のプラス材料とは見られますが、今後の展開に注視は必要です。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国通貨:ブラジル、景気の不透明感を財政規律が払拭』を参照)。

 

(2020年12月4日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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