「手術が好き」ただそれだけだった…。新人外科医:山川が見た、壮絶な医療現場のリアル。※勤務医・月村易人氏の小説『孤独な子ドクター』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、連載していきます。

「メスください」いよいよ、執刀が始まる。

「はい。お名前は、えっと、谷真一さんです。えー、胆嚢結石症に対して、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います……」

 

タイムアウトとは、手術や処置などの前に行う確認作業のことである。手術前に患者さんの名前や術式をその場にいるスタッフ全員で最終確認し、間違いのないようにする。術前以外にも麻酔前や退室前など、あらゆる場面でタイムアウトは行われる。

 

「先生、手術時間は?」

「1時間30分くらいです」

「出血量は?」

「少量です。よろしくお願いします」

「お願いします」

「お願いします」

 

外回りの看護師さんに先導されながらなんとかタイムアウトを終える。

 

「メスください」

 

いよいよ、執刀が始まる。

 

「ではお願いします」

「お願いします」

「お願いします」

 

最初のメスが患者さんの皮膚に入る直前にもう一度、挨拶するのが慣習である。みんなが僕の声を追いかけてきて、自分が先頭に立っていることを実感する。助手の時とは全く違った緊張感があり、胸が高鳴る。

次ページ「違う違う。」新人医師、撃沈の様子…
孤独な子ドクター

孤独な子ドクター

月村 易人

幻冬舎メディアコンサルティング

現役外科医が描く、医療奮闘記。 「手術が好き」ただそれだけだった…。山川悠は、研修期間を終えて東国病院に勤めはじめた1年目の外科医。不慣れな手術室で一人動けず立ち尽くしたり、患者さんに舐められないようコミュニ…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録