相続対策としてのアパート経営に対する疑問
筆者はここ数年の相続税対策の一環としてのアパート経営ブームに疑問を持っています。一方で、「先祖代々の土地を売却処分したくない。だからこそ、その土地にアパートを建てて経営したい」という資産家の気持ちも理解できます。
そのように考える資産家には、アパート経営よりむしろ、「駐車場」がおすすめです。なぜなら、投資額が少なくて済み、かつ収益を生み出すことができることはもちろん、さらに時期を見て必要に応じて積極的な土地の有効活用に転じることもできるからです。
駐車場経営を行うと事業を営むことになりますから、固定資産税は自宅や貸家のように住
宅用の軽減措置を受けられず、約4倍から6倍の割高になります。その一方でメリットは、何よりも解約しやすく、必要なときにいつでも売れるということです。
アパート経営が難しくなって入居者に立ち退いてもらうには、最低でも半年分の立ち退き
料とともに、たび重なる交渉が必要になります。居住権などをめぐって争いが起これば、2〜3年は立ち退いてもらえない覚悟も必要です。
それに対して駐車場であれば、一般的には2〜3カ月の立ち退き期間があれば契約者も対
応してくれます。必要に応じて近隣の別の駐車場に契約し直してくれるからです。
ここ数年、駐車場の管理業者もサービス内容が充実してきました。ノウハウを持った企業が多数現れ、しっかりと管理してくれるのです。「自分で経営するのは面倒だから嫌だ」と考えるオーナーに対しては、一括借り上げしてくれる業者もあります。
しかも、条件の良い土地では賃料保証してくれるケースもあります。駅に近いところや商業地であれば、3層、4層の立体駐車場とすることもでき、アパート経営のような大きな投資額を要しません。
駐車場建設という利用法は比較的手軽なうえに、取り壊すことも容易です。これは、土地
を利用して収益を上げる資産家にとって、大きなメリットでしょう。
さすがに需要のまったくないところに駐車場を作ってもムダですが、駅から離れた郊外でも意外に捨てたものではありません。郊外型のショッピングセンターや工場、大きな公園や文化施設などに隣接した土地の場合は隠れた駐車場需要があるからです。
そのような観点から、資産家が「放ったらかしの土地をどうしようか」と悩んだり迷った
りしているのであれば、筆者は駐車場経営ができるところは駐車場にすることをすすめています。