本記事では精神保健福祉士・野坂きみ子氏の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「こころの問題」についてひも解いていきます。

精神障害も「障害」として認定されることに

精神保健福祉法によって精神障害のある人にも手帳が発行され、障害として認定されることになりました。等級は1級から3級、1級が最重度です。精神疾患において医療検査機器で検査が可能なのはてんかんの脳波くらいですから、精神科医の診断によって等級が決まることになります。

 

そして特徴的なことは、名称が精神障害者手帳ではなく精神障害者保健福祉手帳であることと、2年の有効期限がついていることです。身体障害者手帳も療育手帳も期限はありません(身体障害で障害がなくなればこの限りではありませんが)。2年ごとに更新することになります。

 

そして発達障害が手帳の該当となったのは、障害者総合支援法(平成25年)以降です。障害として認められるということにおいても、精神障害はかなりあとで、その扱いも流動的なものであることがわかります。それでも社会防衛的観点から、福祉の観点に少し進んだことになります。

 

いつ障害が認定され、手帳が発行されるかですが、先天性障害については判定後すぐ申請できますし、また身体障害の非可逆的障害(手足の切断など戻ることがないと考えられる障害)も診断され状態が落ち着けば、診断書を書いてもらい申請できます。

 

それ以外、何らかの疾病により障害が残った場合は、6ヵ月の経過後になります。障害手帳においては初診から6ヵ月目を障害認定日と言います。障害認定日以降に診断書を書いてもらい申請します(ちなみに障害年金は1年6ヵ月を障害認定日としています。法律によって異なります)。

 

考え方としては、疾病の発生、初診以降半年をめどに治療およびリハビリに専念し、それでも残った障害について認定します。

発達障害は「先天性障害」のはずだが…

するとここで疑問が出てきます。

 

発達障害で、幼少期から知的障害を伴っている場合は、判定後、知的障害者の手帳の該当となります。しかし大人になってから、精神症状を呈し精神科に受診し、6ヵ月ののち精神保健福祉手帳の該当となります。発達障害は生来の脳神経の問題であり、本来的には先天性障害のはずなのですが、実際はそうではないということになります。

 

「先天性障害」のはずだが…(画像はイメージです/PIXTA)
「先天性障害」のはずだが…(画像はイメージです/PIXTA)

 

大人になってからわかるということは、大人になるまでは何らかの特徴があっても問題にならず、障害とは認められず、大人になってから問題となり、障害として考えられるようになったということです。ここで障害と考えられるのは、日常生活の支障、主としてコミュニケーション、社会性の問題です。

 

ブーメランがもう一度戻ってくるような複雑さがあり、どう考えたらよいのか難しいところがあります。しかし発達障害の現実のニーズがありますから、制度的にこのようになったのも十分理解できますし、現代的な課題に対する奮闘と流動性を感じます。

 

 

本記事は連載『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』を再編集したものです。

 

野坂 きみ子

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る

 

■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走

 

“発達障害かもしれない人”とともに働くこと

“発達障害かもしれない人”とともに働くこと

野坂 きみ子

幻冬舎メディアコンサルティング

「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」ーー大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。 長年、医療福祉相談員として働いてきた著者が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なこととは?

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録